~Introduction~
こんにちは、Circulation - Cameraです。自分は星景写真が好きで、つたないものですが自身で撮影もしています。星景写真というのは星空と景色が一緒になっている風景写真です。例えばこんな感じ。
Z9 + NIKKOR Z 14-24mm F2.8 S + Partial Softfilter, ISO 4000, F 2.8, SS 25 sec
この星景写真の撮り方ですが、実はそんなに難しくありません。5年前くらい前になりますがブログ記事にまとめたことがあります。
( ・∇・) < 結構多くの人に見てもらえた記事です♪
~星景写真撮影の機材 (最小限ver.)~
簡単に説明しますと、
① 一眼カメラ (ミラーレスでもレフ機でもOK)
② レンズ (明るい広角レンズがおすすめ)
③ 三脚+雲台
④ 記録メディアとバッテリー
どのご家庭にもあるであろう (!?)、最低限これだけあれば撮影できます ^^b
~クォリティの追求~
でも撮影にこだわり始めるといろいろな道具や技術が欲しくなってきます。光害カットフィルターやソフトフィルター。RAW現像技術。星空と地上景を別々に調整する技術。より高感度に強いカメラ、より明るくより収差の少ないレンズ。ざっと羅列するだけでこのくらいは出てきます💦
その中で星空のクォリティをより向上させることが可能な機材がポータブル赤道儀、略して「ポタ赤」なのです!
ポタ赤は星景写真を撮影しているとぶちあたる大きな問題点を解決してくれます。それはどんな問題か、次の項で解説してみます。
~星景撮影のlimitation~
星景写真を何度か撮影していると下の2つの大きな問題に必ずぶつかります。
・高感度ノイズ
・レンズの収差
星空は暗いのですが、通常の夜景撮影のように長時間露光することはできません。何故なら星は地球上から撮影する以上動いてしまうからです (日周運動)。
例えば上の写真は90秒近く露光しています。
これでは星は盛大に流れてしまいます。
拡大してみますね。
かなり動いていますよね?これを避けるため、露出時間はなるべく短くしたいのです。具体的には10~20秒。そうなるとISO感度を上げていく必要があります (注1)。
すると今度はノイズが問題になるわけです。馬鹿正直にISO感度だけ上げて撮影した写真がこちらです。
ブログサイズでもかなりノイジーなのが分かりますよね?ISO感度を上げないでSSを10-20秒にしたい。するとなるべく明るいレンズ (= F値の小さなレンズ) が好まれます。しかし、それでも得られる明るさには限界があります。
また、絞り解放で使用すると多くのレンズは収差が目立ちます。収差というのは簡単に言えばレンズが球面なため生じる画像の歪みや滲みです。このため星が完全な点に写らず不自然な形になってしまうことがあります。たとえばコマ収差が発生すると下のように点像に羽が生えてしまったようになります。
下はコマ収差の例でございます。
収差はある程度絞れば改善するのですが、そうなると結局ISO感度を上げなくてはいけないというジレンマが発生します。そう、星景写真は常にノイズとの闘いなのです。
~ここまでのまとめ~
少し話が長くなってきたので一回まとめます!星空は暗いですが普通の夜景と違い、あまり長時間露光もできないのでISO感度を上げざるを得ません。しかし、そうするとノイズがうるさくなってしまう。また、レンズには収差があり絞ることである程度改善するが絞るほどISO感度を上げざるを得なくなります。
~星が動かなければいいのに~
もし星が動かなければ長時間露光もできるし気兼ねなく絞れるのに!!で、これを可能にするのが赤道儀という道具です。赤道儀は地球の自転に合わせて回転してくれるので星の動きを打ち消してくれます。これによって長時間の露光を可能にしてくれるという寸法です。
~赤道儀の構造~
赤道儀の中でも天体望遠鏡ではなくカメラを載せることを前提とした比較的軽量なものをポータブル赤道儀、略してポタ赤と言います。今回私が使用したのはKenkoのSkymemoです。
ビクセンのポラリエと並ぶ有名なポタ赤だと思います。ほとんどの赤道儀は下のような構造をしています。
現場ではこれを組み立てて本体を北極星の方向に向けます。
Skymemoの場合、本体にあるこの覗き穴を北極星の方向に向けます。
この作業を導入・極軸合わせと言います。ただ、超広角レンズで撮影する場合はそこまで厳密でなくてもよく、だいたい北極星の方向を向いていればOKです。
~作例~
試しに北斗七星を赤道儀を使って撮影してみました。星の動きを追うことから「追尾撮影」などと呼ばれる方法です。SS 20 sec ISO 800で撮影できており、ほとんどノイズを感じません。
~赤道儀の大きな問題点~
さて、そんな赤道儀には大きな問題点があります。勘のいい人は分かるかもしれませんが星を追尾するということは地上景が動いてしまうということです💦
これは赤道儀を使用する以上避けがたいことです。なので赤道儀を使用した星景写真を撮影する方々は地上と天空を別々の設定で撮影して後から合成したりします。
しかし、この合成がムズい。。。
いろんな人の解説を見たのですが、良くできますなぁ、皆さん。マジですげぇ。。。特に北や南の空は横方向に地上景が横方向 (っていうのかな?) にスライドするので余計に難しい気がします。
~実際に使ってみて~
合成無しでも使えないものかなぁ??ということで、実験してみました。ここに2枚の写真をアップします。1枚目は馬鹿正直に90秒露光した写真。2枚目は90秒間追尾した写真です。どちらも14mmの超広角で撮影しています。
<① 90秒間露光 (追尾無し)>
<② 90秒間露光 (追尾あり)>
これだけでもわかりますが、追尾撮影は流石に星空が綺麗ですね!
一応、星空を拡大して比較してみます。
続いて地上景はどうでしょう?比べてみます。
<追尾無し>
<追尾あり>
明らかに90秒間追尾した方は木々がぶれていますよね。けど遠方の山のズレはそんなに気になりませんね。もう少しSSが短ければどうかな?ということで今度は90秒間ではなく50秒くらいの作例を載せてみたいと思います💡。
こちらが50秒露光した写真です。地上の流れはほぼ気になりませんし星空も綺麗です。
Z9 + NIKKOR Z 14-24mm F2.8 S, ISO 3200, F 2.8, SS 50 sec
何か所か拡大したものをアップしてみましょう。
<① 写真中央:星の流れ気になりません>
<② 写真周辺:同じく星の流れ気になりません>
<③ 地上景:個人的には許容範囲内!>
~合成無しでも!?~
こう考えると地上景と星空を別撮り合成という難しいことをしなくても30~60秒露光で15mmクラスの超広角レンズ +広い遠景であれば行けそうな気がします。
( ・∇・) < これは朗報!
~まとめ&現時点での感想~
赤道儀を使用することで星空を長時間露光したりレンズを絞ったりしやすくなります。しかし星景写真を作成しようと思うと地上景がぶれてしまうので、完全に自由な時間露光しようと思うと合成方法を身に着ける必要がある。ただ30-60秒程度で超広角レンズなら地上景はそれほどぶれないかもしれません。
とはいえ、使える構図も焦点距離もある程度制限されるのでどんな場面でも使えるわけではありません。その重さ・セッティングの面倒さを考えると撮影しなれた場所などで計画的に使用しないといけないように思いました。
~加算平均でも充分?~
ちなみに今回はさすがに長くなるので割愛しますが加算平均法という方法も星景写真のノイズを打ち消す方法として普及しています。赤道儀を使った方がよりリアルなのでしょうが、手間暇を考えると加算平均法でも充分なのかなぁとも思います。これに関してはまた今度記事を書いてみます。
~おわりに~
今更ながらポタ赤を初めて使用してみました。なかなか癖のある道具ですが、めげずにもう少し活用してみたいと思います ^^;
やはり「適切な時間露光する」というのは写真の基本ですから、それを叶えてくれるポタ赤は重要なアイテムであることは間違いないでしょう。最後になりますが、もしご質問やアドバイスがあればコメントに下さいますと幸いです。それでは今回はここで失礼します m(_ _)m
~おまけ:アストロレーサー~
Pentaxの一部の一眼レフに搭載されている機能です。カメラ本体に内蔵された手ぶれ補正機構がGPV情報と連動して簡易的ですが星を追尾してくれる機能です。これ凄いですよね!赤道儀を持ち運ばなくてもカメラ内にその機能が内臓されているとか羨ましいです!
~注釈について~
ISO感度を上げるしかないと書きましたがも、後からRAW現像でも良いです。ISO不変性という事象です。