こんにちは、Circulation - Cameraです。前回、Lightroomの新しいAI搭載のノイズリダクション機能を紹介しました。
前回のテーマにちなんで今回は写真のノイズのお話です。6年間ブログやっていて実はノイズに関してまとめて語ったことが無く、いい機会なので記事にしてみました。今回は以下のようなQ&A形式にしてみようかと思います。
Q1.) 熱ノイズと高感度ノイズの違いって分かりますか?
Q2.) あなたの機材の最大許容ISO感度はいくつ?
Q3.) 高感度ノイズ低減をオンにしてますか?
Q4.) 長秒間ノイズ低減をオンにしてますか?
Q5.) ダーク減算したことありますか?
Q6.) ISO感度を上げるのと後調整とどっちがノイズ少ないの?
Q7.) 加算平均によるノイズ除去って知ってますか?
Q8.) モノクロ専用カメラはノイズ少ないの?
なんとなく後半に行くほどマニアックな内容になるようにしてみました。ガチで読むと15分くらいかかる約3500字記事 (注釈除く) なのですが、なるべく分かりやすく書いてみましたので興味のある方は時間のある時にでも読んでやって下さい。または気になるQ&Aだけでも読んでやって下さい💦
それではよろしくお願いします m(_ _)m
Q1.) 熱ノイズと高感度ノイズの違いって分かりますか?
どちらもデジカメで撮影するときに発生するノイズですが、熱ノイズは撮像素子が熱を持って発生するノイズです。星景写真なんかを撮影しているとよく出くわします。例を出すとこんな感じです。
こういうゴミのような点々が発生します。当然暑い場所ほどよく発生し、夏場とかは1分程度で発生し始めます。
一方、高感度ノイズは撮像素子の露光が足りないために信号を増幅するときに主に発生します。写真撮影では撮像素子を充分に露光させることが理想です。でもそれができないときに露出アンダーにならないようにISO感度を上げて信号を増幅させますよね (※1)。このときに発生するのが高感度ノイズです。
高感度ノイズはさらに輝度ノイズとカラーノイズに大別されます。輝度ノイズはザラザラしたノイズでカラーノイズは本来存在しない色が発生することを指します。
以上が熱ノイズと高感度ノイズの違いです (※2)。
Q2.) あなたの機材の最大許容ISO感度はいくつ?
まぁ、星撮影や夏の夜景での長時間露光でもなければ熱ノイズはあまり関係ないですよね。より身近なノイズは高感度ノイズの方になります。
で、この高感度ノイズがISO感度をどこまで上げると気になるか、ご自身の愛機の基準はご存じでしょうか?
古典的な話としてはセンサーサイズの大きいカメラ、画素数が少なめのカメラの方が高感度ノイズは少ないとされています。ですがこれも絶対ではありません。例えば同じフルサイズでもD810 (約3600万画素) ではISO 1600からかなりノイジーで星景写真撮影が難しいと感じていましたが、後継機のD850では画素数が約4500万画素と上昇したにも関わらずISO 4000くらいまで全然余裕で格段に快適になりました (※3)。ちなみにZ 9もISO 4000くらい、Z 6ⅡはISO 6400くらいからノイジーさが気になる印象です。
加えて前回話題にしたような帰宅してからも可能なノイズリダクション機能も次々に出現し洗練されてきています。後処理をどこまでやるかによってもご自身の愛機の許容できるISO感度は違ってくるでしょう。
一応、DxO Markさんなんかがテストしたlowlight ISOなど高感度耐性の指標もありますが、自分の撮影スタイルに対する許容できるISO感度を知っておくことは重要だと思います。
Q3.) 高感度ノイズ低減 (※4) をオンにしてますか?
自分は高感度ノイズ低減機能はオンにしています。高感度ノイズ低減機能はカメラがRAWデータからJPEGを作成するときに自動的に高感度ノイズを低減してくれる機能です。オンにしておいて特に害はないのでオンにしています。ただし、当然ながらもともとのRAWデータにはノイズ出っぱなしなので、後からRAW現像する場合は特に恩恵もありません。例えばこの写真はオンにしてJPEG撮って出しが左。右の写真はRAWデータでノイズ特に調整していないものです。
ですから、RAW現像初心者の方は戸惑うのです。「え!?RAWの方がノイズ多いじゃん!!」って。RAW現像はノイズも手動でリダクションする量を調整するので当たり前なのでございます m(_ _)m
Q4.) 長秒間ノイズ低減をオンにしてますか?
自分はオフにしています。この長時間ノイズ低減機能は先にお話しした熱ノイズを低減する機能です。高感度ノイズと違って熱ノイズは同じ条件 (同じ気温・同じ露光時間) なら同じように出現します。
なので長時間ノイズ低減をオンにしておくと1枚撮影した後、もう1回シャッターが閉じてダークフレームというものを作ります。それを自動で元画像と重ねてノイズキャンセルしてくれるという話です。
ですから、1枚撮影した後、次の撮影までダークフレーム (※5) を作る時間が必要です。例えば30秒露光したら次の撮影ができるのはさらに30秒経過してから。熱ノイズが大きな問題となる星景写真撮影でもこの待ち時間はかなり鬱陶しいですし、コンポジット撮影はそもそもできなくなってしまいます。よって自分はオフにしています。
ただし、長秒時ノイズ低減は高感度ノイズ低減とは違い、ちゃんとRAWでも効果があります。なので事項で触れるダーク減算や自宅に帰ってからのスポット修正が面倒ならオンにしておくのもアリだと思います💡
Q5.) ダーク減算したことありますか?
ダーク減算は自分でダークフレームを作って手動で減算する方法です。1枚撮影した後にレンズキャップをしてもう1回撮影してダークフレームを作って帰宅してからソフトでデジタルサブストラクションする方法です。自分はStarStaxというフリーソフトで必要に応じてやっています。
Q6.) ノイズの調整ってISO感度を上げるのと後調整とどっちが綺麗なの?
中級者くらいになってくるとこの疑問がわきます。果たしてISO感度を上げてきっちり適正露出になるように撮影するべきなのか、それとも多少露出がアンダーでもあとで現像で適正露出に近づければいいのか??
個人的な答えを言いますと、「多少アンダーでも後で適正露出に近づければいい」です。これの真意は語ると長くなるので今度別の記事を書いてみようかと思いますが、いくつか理由があります。それを羅列しておきますが、ちょっと良く分からないという方はごめんなさい💦
・ISO不変性という概念
・後調整の方が部分別に調整が効くから
・現場では後から調整が効かないことに集中したいから
Q7.) 加算平均によるノイズ除去って知ってますか?
高感度ノイズは熱ノイズと違ってランダムに出現します。つまり、1回目の撮影でノイズが出ているピクセルも、もう1回撮影するとノイズが出ていなかったりします。これを利用して複数枚の写真を見比べてさせて全体のノイズを抑えるのが加算平均法です。当然ながら用意する写真が多い方がいいので、これをやる場合は同じ構図で何枚も写真を撮影します。
こんな感じで同じカットをたくさん撮影します。方法論的に当然なのですが、完全に静止している被写体に有効な処理方法でございます (三脚もほぼ必須)。従って、星景写真の場合は星が動くので加算平均の仕方にちょっとコツがいるのですが今回は割愛します。実際に可算平均するとこんな感じです (ISO 8000で撮影)。
Q8.) モノクロ専用カメラはノイズ少ないの?
正しいです。最近、PentaxがK-3 III Monochromeを発売して話題のモノクロ専用機。分かりやすく説明するのがちょっと難しいのですが、モノクロ専用機にはカラーフィルターという撮像素子のフィルターがありません。そして色情報が無いのでベイヤー配列で必須となるデモザイクという処理が不要です。これによって高感度耐性は高くなります。
~おわりに~
ということで今回はデジカメのノイズに関する8つの疑問をQ&A方式で書いてみました。そんなこと知っているわ!という方には申し訳ないですが、デジカメとノイズは切っても切れない関係にありますので知識の整理になったら幸いです。もし質問などありましたらコメントに下さい。分かる範囲でお答えします。それでは今回はここで失礼します m(_ _)m
〜関連リンク〜
前回記載したLightroomの新しいノイズ除去機能です。
途中でも少しだけ触れたISO不変性の記事です。多少露出アンダーで撮影しても後から救済できるだろうという根拠になります。
~注釈~
※1.) 暗所で手持ち撮影する場合や被写体が動くためSSを速くしないといけない場合など。
※2.) 高感度及び熱ノイズ以外にフォトンノイズという光の性質によるノイズもあります。
※3.) これは裏面照射型という今では結構当たり前になってきた撮像素子に対する工夫が大きいです。
※4.) 高感度ノイズ低減はNIKONの表現です。他社には他社の表現があります。Sonyですと高感度NR、Olympusですとノイズリダクションなどです。
※5.) ただしカメラ内で長時間ノイズ低減をした場合のダークフレームはデータとして残らないはずです。