Circulation - Camera

巡る季節を写真に残す! ~Since 2017-05-01~

東京のCOVID-19に対する医療体制が割と限界な件

〜Introduction〜

こんにちは、Circulation - Cameraを運営しているTatsumoです。言わずもがな、このブログは写真・カメラがテーマです。

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写真を撮っているときは本当に楽しい!

そのため、自分は医療職なのですが、ブログでは医療的なテーマは絶対に扱わないつもりでした。しかし、2020年後半からCOVID-19が再び猛威をふるい始め、東京の医療情勢は割と限界を迎えつつある現状があります。前線で仕事していると肌で感じるこの危なさはひょっとしたらシェアしておいた方がいいかなぁ思っていたんですよね。で、年末には感染者数がかつてないほどの増加傾向となり遂には新規陽性者数が1300/dayを超えてきましたので思い切って記事を書くことにしました。

カメラブログで書くのではなく別ブログを立ち上げて書こうかなぁとも思いましたが、ある程度毎日アクセスのある当ブログで綴った方が有意義と判断し、己の医療的なテーマは扱わないという掟を破る決断をしました。

とまぁ随分大袈裟な感じで始まってしまった記事ですが、そんな小難しいことは言いませんし、あんまり長くなっても読みにくいですから5-10分程度で読めるような長さにまとめようと思います。ひとりの人間の意見ではありますが現場で働く者のリアルな声なので、もし興味がございましたら覗いて行ってやってくださいませ

それではよろしくお願いします m(_ _)m

〜自分の仕事〜

自分は都内の総合病院で医師をしております。内科のような外科のような仕事 (何それって感じですよね ^^;) をしていて定期的に救急業務もしております。なのでCOVID-19感染者を外来で見ることは日常ですし、場合によっては入院管理もすることがあります。

 

〜今の東京の医療、危ないの?〜

はい、危ないです。それを感じたからこの記事を書くことにしたんですから当たり前っちゃあ当たり前ですが ^^;

まず現在の東京の感染者に対するスタンスは簡単に言えば以下の通りです。

・軽症者や無症状者はホテル療養か自宅療養

・軽症や無症状でもハイリスクなら入院

・中等症以上なら入院

ここでいう軽症、中等症、重症の分類は以下のようになっています。

※1月3日SpO2 (爪とかで測れる血液酸素飽和度のことです) を追記しました。

 ① 軽症=酸素投与不要な症例

         (SpO2≧96%)

 ② 中等症=酸素投与が必要な症例

          (96%>SpO2>93%が中等症Ⅰ)

          (93% ≧ SpO2が中等症Ⅱ)

 ③ 重症=人工呼吸器管理が必要な症例

患者さんが「うげぇ、しんどいよぉ」と感じているだけでは重症にはならないわけです。それはまぁ良いとして、大事なのはここから。先ほど中等症以上は入院と書きましたが、それを受けることができる病床はあらかじめ決まっています。感染症指定病院や公費の入っている大学病院がまず受け入れていきますが、春の時点ですでに病床は全然不足していて、前述したような病院でないいわゆる一般病院 (自分が勤務しているのはここ) も感染者用の病床を作るように都からお願いされています。

で、早い話がこうやって作った病床がかなり埋まってきていまして、受け入れ先が見つからず2020年12月後半からなんと中等症でも自宅に帰らざるを得ないケースが出てきています。

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こちらは東京都のHPから抜粋した2021年1月1日時点の病床状況です。3500病床のうち2594床が埋まっています。なんだ、まだあるじゃないと感じるかもしれませんが、実際その数の病床を運用できるだけのスタッフが用意出るかは別問題ですし、どの病院も院内急変に備えて病床を100%は埋めたくないというのが実状ですから、現場感覚では相当切迫しています。

 

 

〜本当にそんなことあるの?〜

酸素投与が必要なのに家に返されるなんて本当にあるの!?って思うかもしれませんが、本当にあることなんです。保健所に電話して、「(重症化して)人工呼吸器につなげてからかけてください!」って怒られたと私のところに相談にきたスタッフもいますし、自分自身も重症化するという予感がありつつどうしても受け入れ先が見つからず自分の病院も受け入れ病床が満床で入院させられず帰して結局夜中に他の病院に救急搬送された症例を経験したのは記憶に新しいです。

※ちなみにこれは保健所が悪いと言いたいわけではないです。保健所がんばってますよ、病院もそうですが年末も年始もありません。本当に余裕が無いのです、病院も保健所も。

「おいおい、無理にでも自分の病院に入院させれば良いじゃないか」と思われるかもしれませんが、急には無理なんです。COVID-19感染者を備えのない病棟に強引に入院させればたちまちにクラスターを発生させスタッフも他の入院患者も巻き込まれてしまいますから。

 

 

〜それでも感染者数は増えている〜

少し話が変わりますが現在都内ではPCR検査は割と簡単に受けられます。症状があるのにPCRを取ってくれなかったというケースはかなり少ないと思います。年末に1300人を超えたというのは検査数が増えたというよりは本当に陽性者数が上がっていると思います。

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増加傾向。東京都HPより抜粋。

ただでさえ受け入れ可能な病床が逼迫しているのに更に増えていくというのは驚異的です。病院関係者にとっても、患者さんにとっても。。。

 

 

〜読者の方にお願いは?〜

とは言え、別に私は人に何かをお願いしたりできるほど偉い人間ではありません。みんなそれぞれ頑張っているしそれぞれ苦労をしていると思います。なので「医療従事者が大変だからもっと自粛しろ」って思ったことは実は1回もないです。深夜にいまだに急性アル中で運ばれる人を診ても別に私は怒りはしませんよ、呆れはしますが (笑) まぁそういう人にもなんか事情があるのでしょう。

ただ、お願いすることはありませんが知っておいて欲しいことはあります。せっかく読んでくださっているのですから暗い話だけでなく前向きになれる知識を!

それはこのウィルスの感染経路です。

ウィルスの感染経路は、

飛沫感染

接触感染

の2通りということです。飛沫感染とは会話をするときに口から出るしぶきによる感染です。故に射程距離 (!?) は約2mとされています。一方、飛沫核感染 (=空気感染) は病原体が中空を漂うためもっともっと遠くまで感染してしまいます。有名どころですと結核菌なんかは飛沫核感染しますが今のところCOVID-19はそこまでの感染性はないことになっています。ですからマスクをすることや真正面から会話をしないことが対策になります。接触感染はこまめな手指消毒と無闇に自分の粘膜 (眼・鼻など) に触れないことが対策になります。

これさえきちんと分かっていれば決して遊びに行ってはいけないとか絶対に外食してはいけないということではありません。逆に、どれだけ事前に手指消毒しようがマスクせずに至近距離で話してたら意味ないです。三密じゃないから良いだろうと外で会話することもマスクせず至近距離だったら危険なわけです。

「今から自分がしようとしていることが飛沫感染接触感染につながらないかな?」って考えることが自分と相手を守る最善策だと思っています。外なら三密じゃないから良いだろとかカウンター席で面と面を合わせてはないから良いだろとか親戚同士や職場の同僚とならノーガードで遊びに行っても良いとか忘年会じゃなくて意見交換会だから良いとか都合良く解釈することはウィルスには通用しませんし、逆にこれらを守っているのに散歩も旅行も外食もスポーツもダメだというのも本質から外れていると思います (今後状況が更に悪化して感染者数をグッと減らすために緊急事態宣言でも出れば別ですけど)。

 

〜終わりに〜

ホント、医療系の記事なんて書くつもりなかったですけどね、このブログで。でもさすがに結構危ない状況なんですよって知って欲しいですし、感染しないための方法を伝えたくて記載することにしました

最後になりますが御質問がございましたらコメント欄にお願いします。私が分かる範囲ではございますが、なるべくきちんと返答したいと思います。逆にあまりにも冷やかし的なコメントには返信しかねますのでご容赦ください。仕事でならともかく、あくまで趣味でやっているブログで嫌な思いしたくないので。。。それでは今回はここで失礼いたします。

 

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~1月3日 17時追記~

思った以上に多くの方が見て下さり、皆さんがかなり気にされているテーマだということを再確認できました。「何も自分が書かなくても、、、」と書くかどうか本当に迷いましたが書いて正解だったのかなと今は思っています。あとは今回記載したことが皆さんの健康につながってくれたら一番嬉しいです。私はこの年末年始も日によっては発熱者や濃厚接触者を診る必要があり、1日に何十人も診察した日もありました。まだまだ感染者は増えていきそうな感触ですが、生活に感染防御をうまく取り入れて、お体に気を付けてお過ごし下さいませ m(_ _)m

 

~1月6日 追記~

tatsumo77.hatenablog.com