Circulation - Camera

巡る季節を写真に残す! ~Since 2017-05-01~

前回の記事 (東京のCOVID-19に対する医療限界記事) への追記

~前回の記事を受けて~

こんにちは、CIrculation - Cameraを運営しているTatsumoです。前回の記事は思っていたよりも多くの方がご覧下さり、このテーマの関心度の高さを再認識させられました。

コメントもいろいろと頂戴しました。正直、あまり読みたくないような内容が多くなるんじゃないかなと小心者な自分としては不安でしたが、そんなことはほとんどなくて、要旨を理解共感してくれたという方が多く安堵しました。それだけでなく応援してくれる方もいてうれしかったです。COVID-19陽性者や疑いの方の診療をすることは今の東京で救急や急性期医療に携わる者として当然のことだと思っています。とはいえ、激励してもらえることは1人の人間として率直に嬉しいものでした。ありがとうございます。引き続き頑張りますがブログ自体は次回からまたいつもの写真ブログに戻って写真やカメラの話を好き勝手に書いていく予定です。

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その前に、1都3県に緊急事態宣言が発令される今、少しだけ追記をしておこうと思います。今回も10分程で読めるようにまとめたいと思いますので、もしお時間があればよろしくお願いします m(_ _)m

 

~病院事情はどうなったか?~

前回の記事を書いたのは1月2日で現在1月6日なのですが、やはり病床数は厳しい状態で、率直に言うと病院事情は悪化していると感じています。

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現在都内の中等症用の病床数は3025/3500が使用されています。すなわち86.4%埋まっています。どこも自分の病院内発症のために100%病床は埋められませんし、病床があってもスタッフが足りていなければ受けられません。はっきり言って都内の中等症用の病棟は満床です。転院先はもはや探しても絶対に見つからないと思っています。このため、私の勤務先でも中等症者受け入れ病床数を年末から増やして対応しています。これは簡単なことではありません現場スタッフの負担も増しますし、COVID-19陽性者受け入れ病床を増やすということは一般病床がその分減るということですから。しかしそうして作った病床も瞬く間に埋まってしまい、新たに調整中です。

一方で感染者数は増加傾向にあります。

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都内の1か月間の新規感染者数の推移 (東京都HPより抜粋)

 

~なぜ感染者数は増えている?~

COVID-19の潜伏期間が14日間以内 (中央値5日) と耳にしたことがあるかもしれません。これは事実です。故にクリスマスや年末年始に人が動いたり、普段合わない人どおし (親戚や遠方の友人など) が接触した影響は確実に受けています。前回と同じことを書きますが、このウィルスは飛沫感染接触感染で広まります。年末年始から14日間と単純にカウントしても1月中旬までは増加こそせよ減少することはないと思います。

あとはイギリスや南米の変異株の影響もあるのかもしれません。下のようにもう少し長いスパンで見ると12月中旬から特に患者数が増加しているので関係はあるのかもしれませんね。しかし変異株がどの程度寄与しているのか臨床医レベルでは判断しかねます。

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都内のもう少し長いスパンの新規感染者数の推移 (引用:https://hazard.yahoo.co.jp/article/covid19tokyo)

 

~非常事態宣言について~

他にも関連する因子は多数あるでしょうが、いずれにせよ患者数は増加傾向にあり、このように既に都内のCOVID-19陽性者受け入れ状態は限界を迎えております。ここに更に成人の日の三連休に人の出が増えれば感染者数が上乗せされていくことになります。従って、非常事態宣言など今は感染者数を防ぐ動きを行政はするべきです (実際には到底遅すぎですが)

感染者数を減らす一方で受け入れられる病床を増やすことも重要ですし、現状では前向きに進めるべきですが、先に話しました通り病床を増やすということは「一般病床を減らす+一般病棟のスタッフを移動させる」ということなので本当に容易なことではございません。

※どこかに新たな専用病院を作れたら一般病床数は割を食いませんが、そうだとしてもスタッフを集めるのはやはり簡単な事ではないと思っています。 

 

トリアージについて~

トリアージというのは多くの患者さんを診なくてはいけないときに優先順位をつけることを指します。今でも全ての医療施設で軽症・中等症・重症などと振り分けて検査や治療の優先順位をつけています。これは当たり前のことで軽症者と重症に準ずる方であれば後者を優先して診察する必要があります。

※もっとも軽症者でも今後急変する可能性はありますから、患者個々人のrisk factorは考慮しなくてはいけませんが。

一方、本人・家族に治療希望があるにも関わらず治療適応なしとトリアージすることや助かる可能性が低いからと人工呼吸器を外すということは許されていません。それは絶対です。しかし、現在の都内の受け入れ病床は実質満床です。入院先選定中や自宅待機中に増悪して重症化して結果的に治療が遅れたり不充分になるケースが増えていくことは想像に難くありません。また、COVID-19ではなくても心疾患や肺疾患、下手をしたら外傷で救急車を呼んでも搬送先がなかなか見つからないケースも増える可能性が高いでしょう。私は2020年の春に、結果的にはCOVID-19陽性例では無かったのですが、呼吸困難感で救急車を呼んで受け入れ先が選定できず5時間以上車内で待機させられたケースを受けたことがあります。極端な例でしょうが、今でも印象に強く残っているケースです。

 

~今後どうしたらいいの?~

先に記載した通り、今都内の医療状態は非常に厳しい状態にあります。絶対的な新規患者数を減らす必要に迫られています。それは我々医療者のためではなく、医療を受ける方にとって大事なことです。敢えて言いますが、「医療関係者が疲弊しているから頑張ろう」というのは間違いで「この逼迫状態が続けば、いざCOVID-19に感染したり大きな病気にかかったときに充分な治療が受けられなく恐れがあるので頑張ろう」です

医療関係者だけではなく老若男女問わず多くの方々が、時には自分の想像も及ばないような苦労をされていると思います。まだコロナ渦は終わりが見えません。終わりの見えない頑張りは人間には難しい。なのでどこかで息抜きだって必要です。

私としては、改めて「COVID-19は飛沫感染接触感染するウィルスである」という性質というか本質を理解して行動することが自分も周りの方も感染させない最善策だと伝えたいです。これが今回の記事を読んで下さった方が安全な日常生活を送ったり息抜きをするためのヒントになれば嬉しく思います。ちなみに緊急事態宣言は必要だと思いますが、発令する側もされる側もこの感染の性質・本質を踏まえていない緊急事態宣言であればあまり意味はなさないのではないか、というのが自分の意見です。

 

 

~おわりに~

以上、前回の追記でした。緊急事態宣言が発令されることになりましたし、前の記事で自分の意見を理解して下さった方や激励の言葉を下さった方に1度も御礼を言わないことはあまりに失礼と思い、この記事を書きました。自分は引き続き臨床でCOVID-19と向き合いますが、ブログは次回からはもともとの写真ブログに戻らせてもらいたいと思っています。

「現場の実情を是非届けて頂きたい。この騒動が収まってから仕事の話を封印して下さい。」というコメントも頂きましたが、このブログに医療の話を書くと決めたのも、「今回ばかりは現状と誰でも可能な対策を自分なりに誰かに伝えることが有意義になる」と信じたからで、自分の周囲の状況などを逐一報告したり、レミデシビル・ステロイド・トシリズマブ・ファビピラビルなど薬を紹介するのは目的ではありませんので御容赦ください。

もし御質問がございましたら前回と同様に自分なりに真面目にお答えしたいと思います。あと、プライバシーに関わることや冷やかし的な内容には返答しかねます。また、前回「こんなデータもあるよ」とか「こんなブログもあるよ」とリンクを紹介して下さった方も結構おられたのですが、コメント欄がチャット欄になってしまいそうでしたのでコメントをアップしませんでした。勝手ですが御理解下さいますと幸いです。

それでは今回はここで失礼します。どうぞお体に気を付けてお過ごしください m(_ _)m