~Introduction~
こんにちは、Circulation - Cameraです。今回は久しぶりにカメラの豆知識ネタです。今回のテーマは「環境の明るさの評価」です。まずはこちらの写真をご覧ください。
御覧の通りピーカンのビーチで撮影した1枚です。
この写真はISO 100, F 8.0, SS 1/640 secという設定で撮影されております。
※SS = シャッタースピード
さて、同じ設定で少し曇った日に撮影をすると下の写真のようになります。
明らかに露出がアンダーですよね。
これをF値やISO感度を動かさずに、適正露出で撮影しようとするとこうなりました。
ISO 100, F 8.0, SS 1/640 sec ➡ ISO 100, F 8.0, SS 1/80 sec
今度はこれと同じ設定で一歩だけ屋内に入った場所で撮影してみます。体感的にはほとんど明るさは変わらない場所ですが、こんなに暗くなってしまいます💦
ISO 100, F 8.0のままですと、SSを1/80 secから1/20 secに変更してやっと下の写真のようになります (これでもまだアンダーですけどね ^^;)。
人間の瞳は意識しなくても自動的に入ってくる光量を調整してくれます。なので屋外から屋内に移動しても「わ!急に暗くなった!どうしよう!!」とか感じないでしょうが、実は環境光ってかなり変化しているんですよね。
では具体的に晴れの日と曇りの日はどのくらい明るさが違うのでしょう?また、屋外と屋内はどれくらい明るさが違うのでしょう??
今回はそんな「環境光量の評価」をテーマに記事を書いてみました。私がこの手の記事を書くと毎度毎度のことなのですが、5000字近い長い記事になってしまいましたので、興味のある方は時間のある時にご覧くださいませ ^^;
それではよろしくお願いします m(_ _)m
~適正露出とは?~
写真を撮影するときにちょうど良い明るさ (≒ 最適な濃淡とトーンが再現される明るさ) に写すことを適正露出で撮影すると表現します。「ちょうど良い明るさ」ということですから主観的な指標になってしまいますが、イメージ的にはこんな感じです。
左の写真は露出アンダー、右の写真は露出オーバーと言う感じです。
~露出調整のパラメータは?~
さて、そんな適正露出 (ないしは自分の意図する露出) を実現するために、デジタルカメラでは以下のパラメータを操作します。
・絞り値 (= F値)
・シャッタースピード (= SS)
暗い環境なら撮像素子に当たる光量を稼ぐ努力をしなくてはいけませんし、明るい環境なら撮像素子に光を当てすぎないように注意しなくてはいけません。上の3つのパラメータのうちISO感度は撮像素子に当たった光を電気信号に変換してどれだけ増幅させるかというものですから、撮像素子に当たる光の量をコントロールするのはF値とSSということになります。
暗い環境ならF値を小さくするかSSを長くしますし、明るい環境ならF値を大きくするかSSを速くすることで撮像素子に当たる光量をコントロールします。逆に言えば、適正露出になるF値とSSの関係から環境の光量を定量的に表現できるはずです。
※<注意!> 正確にはF値ではなくT値と表現するべきですし、レンズによってはH値となります。また、マクロ撮影ですと条件は変わるのですが話をシンプルにするために今回はこの前提に立たせてください ^^;
~SSとF値が変化すると??~
基本的なことですが、SSは2倍になれば2倍の光が撮像素子に当たります。一方、F値は1.4倍になれば単位時間当たり1/2倍の光が当たります。
(`・ω・´) < 基本的ですが超大切な話!
「1.4倍って、なんでそんな面倒くさい係数なの?」と思われるかもしれませんが、それに関しては記事の最後におまけとして書きますので今は置いといてください ( ̄▽ ̄;)
ここで写真を1枚御覧ください。
こちらはISO 100, F 4, SS 1/1000 secという設定で撮影しています。先ほど申し上げました通り、SSが2倍になると2倍の光が当たり、F値が1.4倍になると単位時間当たり1/2倍の光が当たります。ということは?
・SS 1/1000 secでF値が4
・SS 1/2000 secでF値が2.8
・SS 1/500 secでF値が5.6
これらは理屈的に同じ露光量になります。ボケの状態は変化するでしょうが、上記のいずれの設定で撮影しても明るさは同じくらいになるはずです。これを表にするとこうなります。横軸がF値で縦軸がSSです。
この表の斜めのboxは全て同じ明るさになりますから、それぞれに番号を振っていきましょう。
~環境の明るさ~
突然表とか出てきて困惑された方もおられるかもしれませんが、難しいことはありません。要するに同じ番号のセル (表で言うと斜めのセル) のF値とSSの組み合わせなら同じ明るさになるというだけですからね💦
では、せっかく表を作ったので、14のセルと6のセルを見比べてみましょう。
F2.8の列を御覧ください。すると、、、
・「6のセル」はF2.8でSS 1/8 sec
・「14のセル」はF2.8でSS 1/2000 sec
となっています。これらが適正露出になる環境だとしたら、6の環境と14の環境では14の環境の方が明るい環境と言えます。
~Exposure Value~
実は今回振ったこの数字は名前がついています💡
その名はExposure Value (略してEV) です!
明るい環境ほどEVが大きくなります。
おおよその目安として以下のようになっています。
EV0は「F値が1でSSが1 secの場合」としています。表をよく見ると分かるようにEVを1つ上げるためにはSSを1/2倍にするかF値を1.4倍する必要があります。
すなわち、EVが1上がると環境としては2倍明るさがupすると言えるかと思います。こうすると、ざっくりと環境の明るさが何倍違うかが分かります。例えばEV4が適正露出の環境とEV5が適正露出の環境では2倍明るさが異なります。
室内のEVを9、快晴でのEVは15だとすると (15-9 =) 6段差がありますから、2×2×2×2×2×2で64倍明るさが違うわけです。そりゃあ、外で撮影していて同じ設定で室内で撮ったら真っ暗になるわけですよね ( ̄▽ ̄;)
~ISO感度が変化した場合は?~
先ほどアップしたこの表を参照していただくと、例えば暗い室内 (適正露出がEV4付近) ではF 2.8, SS 1/2 secが目安になります。三脚を使用しているなら良いですが、このSSでは普通手振れしますよね (`・ω・´)💦
実はこの表はISO 100で撮影することを前提としております。ISO感度が2倍になると1段明るく撮影することができます。なので、以下のように設定を変更することができます。
ISO 100, F 2.8, SS 1/2 sec
ISO 200, F 2.8, SS 1/4 sec
ISO 400, F 2.8, SS 1/8 sec
ISO 800, F 2.8, SS 1/15 sec
ISO 1600, F 2.8, SS 1/30 sec
どうでしょうか?
実際、暗めの室内ってISO 800, F 2.8, SS 1/15 secとかISO 1600, F 2.8, SS 1/30 secくらいになることって多いと思いませんか?
次の項では、さらに実際の写真の設定とEVの関係を見比べてみましょう💡
~作例で検討してみましょう~
(1) 明るい屋外
この写真はISO 100, F 5.6, SS 1/500 secで撮影しています。EV = 14なので理にかなっていますね ^^
(2) 明るい室内
陽がかなり差し込んだ屋内です。 これはISO 100, F 9, SS 1/8 secで撮影しています。EV ≒ 9ということになります。先ほどの富士山と芝桜の写真はEV14が適正露出の環境でしたから、明るさは4段の差があるわけです。この記事の理屈で言うと、2×2×2×2 = 16倍の差があるということになります。人間が「明るい」と感じる環境でもこれだけカメラにとっては差があるということなんですな。
~デジカメ内蔵のTTL露出計~
そろそろこの記事も終了ですが、皆さんは今回の記事をご覧いただくまで、EVという存在を御存知だったでしょうか?
自分はフォトマスター検定を受けるために勉強して始めて知った概念でした ^^;
どうしてEVという概念がそれほど馴染みがないものなのか考察します。
===>
現在のデジタルカメラは自動でレンズを通過してきた光から適正露出をはじき出してくれます。レンズを通ってきた光からカメラが計算してくれるのでThrough The Lensの頭文字を取ってTTL露出計と言います。
メーカーによって表記は異なりますが、NIKON風に言うのなら、
・AモードならF値固定してSSをカメラが自動的に計算
・SモードならSS固定してF値をカメラが自動的に計算
・PモードならF値もSSも自動で調整してくれます
ありがたいことです m(_ _)m
なのでEVの概念を知らなくてもカメラが自動的に適正露出に近い値を提示してくれます。また、マニュアルでF値やSSを設定するにしてもデジタル一眼レフならいくらでも撮り直しが効きますし、ミラーレス機ともなればEVFで現在のF値やSSで撮影するとどういう結果になるか既に見えてます。
なのでEVという概念を知らなくても撮影自体はできてしまうんですよね ^^;
多分これがEVという概念にあまり馴染みがない原因だと思っております。
~まとめです!~
Exposure Valueという概念から環境の明るさはある程度計算することができます。その関係は以下の通りです。EVが1違うと環境の明るさは2倍違い、EVが3違うと環境の明るさは2×2×2 = 8倍違うといった見方ができます ^^
~おわりに~
今回の内容は以上になります。長文になってしまい恐縮です。最後の方にも書きましたように、TTL自動露出計や昨今のデジカメの優れたEVFのおかげで、これを知っているから撮影がうまくなるというものではありませんけれども、「へぇ~」って思って下さいましたら充分です ( ̄▽ ̄)
最後になりますが、ご不明な点や私が勘違いしている点があればコメント欄などで教えてくださいますと幸いです。
それでは今回はここで失礼いたします m(_ _)m
==================
~おまけ①:F値が1.4倍になると光量1/2倍になる理由~
実用上、割とどうでもいいことかもしれませんが一応説明しておきます。これは絞りの形が円形であることに起因します。有効口径をRとすると面積はπ × (R/2)^2です。口径がRの時と比べて面積 (すなわち単位時間当たり通過できる光量) が1/2倍になったときの口径をrとしますと、以下の等式が成立します。
π/2 × (R/2)^2 = π × (r/2)^2
⇔ (R/2) = √2 × (r/2)
⇔ R = √2 × r … ①
従って、有効口径Rの時の絞り値をF、焦点距離をfとすると、
F = f/R … ②
絞りの面積 (単位時間当たりに通過する光量) が1/2倍になるときのF値をF’とすると、
F'= f/r
これに①を代入すると、F' = √2 × (f/R)
これに②を代入して、F' = √2 × F
よって、単位時間あたりに絞りを通過する光量を1/2にするにはF値は√2倍 ≒ 1.4倍すれば良いことになります。
~おまけ②:マイナスのEV~
記事の途中で下のようなことを書きました
・EV = 0は「F値が1でSSが1 secの場合」
・EVを+1するにはSSを1/2倍にするかF値を1.4倍する
逆に言えばEVを-1するにはSSを2倍にするかF値を÷1.4すればいいことになります。例えばEV0がF値1でSS 1 secなのですから、F値1でSS 2 secはEV-1となります。マイナスのEVも表にすると以下のようになります。
要するに暗い環境での設定です。環境光との対比は以下のようなものに思います。ただ、実際に肉眼的にも暗い環境に於いて「適正露出とは何ぞや?」という問題はあるので参考程度に思っていて下さい ^^;
☆作例
この写真はISO 3200, F 5, SS 30 secで撮影しております。この設定は、およそISO 100, F 1.0, SS 30 secに相当するので、EV-5となります。実際はRAW現像で明るさを微調整しているのですが、このあたりの設定になるというのは矛盾はしないのかなと思います。
~おまけ③:ルクスとEV~
今回の記事では、カメラや写真が好きな人にとって身近な数字であるF値やSSを使用して環境の明るさを評価しようと考え、EVを明るさを評価する単位として使用しましたが、環境の明るさと言うと「ルクス」もよく耳にする単位ですよね?
調べてみたところ (ルクス) = 2.5 × {2 ^ (EV)} という関係にあるようです。
なので、
・EV1の場合、2.5 × (2^1) = 2.5 ルクス
・EV2の場合、2.5 × (2^2) = 10 ルクス
・EV10の場合、2.5 × (2^2) = 2560 ルクス
といった関係です。
~関連リンク~
今回の理屈はマクロ撮影の場合は単純に適応できません。実効F値という概念がありますのでご興味のある方は良かったらどうぞ m(_ _)m