~Introduction~
こんにちは、Circulation - Cameraです。かつてから単焦点レンズはズームレンズよりも写りが良いと言われてきました。単焦点レンズやズームレンズと一括りにすることは些か大味な気がしますが、自分としてもある程度納得がいく話だと思っています。とはいえ、ある程度絞ればズームレンズでも十分な写りをしてくれますから自分は風景撮影ではズームレンズを使用することが多いです。下の写真は24-70mmのズームレンズでF16まで絞って撮影しています。
ただですね、私はNIKONのミラーレスカメラ (Zマウント) を使っていますが、ここ最近ズームレンズの描写性の向上が目覚ましいと感じています。例えば14-30mmで撮影したこの写真。暗い環境でしたから解放F4で撮影していますが破綻のない良い描写をしてくれています。
また、24-200mmという高倍率なズームレンズもどの焦点距離でも良好な解像感を示してくれて使用するたびに驚かされています。
少し前のデジカメinfoさんの記事にも、「このレンズがどの焦点距離でも良い描写をする」という点について取り上げられていて、その通りだなと感じました。
ニコン「Z 24-200mm f/4-6.3 VR」は多くの高倍率ズームが苦手としている望遠側の性能も良好に維持されている - デジカメinfo
ズームレンズって「単焦点レンズ並の描写力」なんて褒められ方を良くしますよね。本当にそのレベルに辿り着きつつあるのではないかと感じる今日この頃!
そこで今回はZレンズを題材にズームレンズと単焦点レンズの解像力の違いについて改めて検討してみました。4000字位のちょっと長めの記事ですしグラフとか出てきて少しややこしい記事なので興味のある方は時間のある時に読んでいってやってください。それではよろしくお願いします m(_ _)m
〜先に結論を〜
少し長い記事ですので先に結論というかテイクホームメッセージ的なものを書いておきますね。「ズームレンズは便利だけど解像力を犠牲にしているという方程式は古い概念になりつつあると思う」です💡
~高倍率ズームレンズのチャート~
さて、検証に入りましょう。まずは24-200mm F4-6.3の解像度を示すチャートをePHOTOzineさんのページから拝借して参りました。縦軸はLW/PHという単位で、この数値が大きいほど解像力 (≒ どれだけ細かく識別できるか) が良いということになります。
棒グラフの色に関しては、
・青色のグラフ = Centre, レンズ中央の解像力
・緑色のグラフ = edge, レンズ隅の解像力
をそれぞれ示しています。一般的にcenterの方がedgeに比べて解像力は良いです。横軸はF値ですね。縦軸に話を戻します。この解像力を示すLW/PHはレンズだけではなく撮像素子側の影響も受けるはずなので一概には言えませんが3500以上はexcelent~outstanding、つまりかなり良い解像力と言っていいでしょう。グラフに線を追加しておきます。
さて、そういう目でこのグラフを見てみましょう。どの焦点距離でも解放F値~F16くらいまではcentreの解像力は3500以上をおおむねマークしています。一般に望遠端は解像力が落ちると言いますが、本レンズはその傾向にも抗い優秀な結果を残していると思います。
~単焦点レンズと比べてみる~
さてさて、今回のテーマはズームレンズと単焦点レンズの比較です。単焦点レンズの例としてNIKKOR Z 50mm f1.2/Sを連れてきました。
…いきなり凶悪なレンズを持ってきましたね ^^;
解放から素晴らしい解像力を示しています。っていうかcentreもedgeもどちらも常に3500を超えています。先ほどのズームレンズと比べるとedgeも全くといって良いほど落ちていない印象を受けますね。それではこれらのレンズを比較してみましょう。そんなもん、50mm f1.2/Sの圧勝に決まっているじゃないか!?
しかしどうでしょう?F5.6, F8, F11, F16を比べてみると案外と似たような高い解像度をお互いマークしているのがめちゃくちゃ興味深い結果だと思いました。
もう1つ例を挙げてみたいと思います。85mm。
こちらも単焦点レンズの方が良好なテスト結果が得られていますが、ズームレンズも肉薄しているように思います。
~実写レベルではほぼ同等~
このように解像力をチャートで測定するとズームレンズに比べて単焦点レンズの方が確かに良好な解像力を示していますが、ズームレンズもすごくいい勝負していますよね。このくらいの差になりますと実写レベルでは差を感じなくて当たり前と思います。実際に24-200mmで撮影した写真をアップします。焦点距離24mm、F8で撮影したものです。
チャートでは苦手とされているedgeをアップしますが、それほど気になるような画質の低下はないように思います。
こちらも同じく24-200mmです。焦点距離50mm、F5.6で撮影した結果です。これだけ良く写るなら単焦点の出番ってどこに??って思わず感じてしまうような写りです。
~他のズームレンズは?~
それでは24-200mm以外のズームレンズはどうなのでしょうか?Zマウント用の24-70mm F2.8と14-30mm F4のチャートも持ってきましたので比べてみましょう。
いずれも解放から少なくともF16付近までは、特にcentreで、高い解像力を示していますので24-200mmだけが特別良好な結果というわけではないようです。
~考察とまとめ~
いろいろ書きましたが私がこの記事で主張したいことを要約すると以下のようになります。
「Zレンズのズームレンズと単焦点レンズを比較すると同一のF値どうしでは単焦点レンズの方が解像力が確かに良いようだ。しかし、ズームレンズもほとんどのF値でLW/PH > 3500をマークしていて実写レベルでは解像力に差は感じないだろう。」
これはレンズ設計の技術的進歩はもちろんのことミラーレス化の恩恵が大きいのではないかと思っています。大口径化したこと、クイックリターンミラーから解放されとことからレンズ設計が自由になり単焦点レンズに肉薄する結果が得られるようになってきたのではないかと考察しました。
~Limitation~
今回の考察にはいくつかのlimitationがあります。単一のテストチャートを元にしたものであることはlimitationです (実際には他のレビューサイトの結果も見ていて似たような傾向があ理ましたが長くなるので割愛いたします)。また、レンズの写りというのは解像力だけではなく、「各収差をどれだけ補正できているか、逆光耐性、発色の程度、ボケの質、周辺光量落ちの程度」なども評価されるべき点です。他にもオートフォーカスの素早さ、カバーしている焦点距離なども関係してきます。また、あくまでNIKONレンズしか調べていないことも大きなlimitationですね。
~単焦点レンズを使用する意味は?~
とは言え、最新のミラーレス用に設計されたズームレンズは大変良好なテスト結果を示してくれたのは事実です。最後に単焦点レンズを敢えて選択する理由について考えてみます。単焦点レンズを使用することの最大のメリットはその明るさにあると思います。ズームレンズはF2.8で明るいと言われる中、単焦点レンズならF1.4やF1.8は当たり前です。ゆえに暗所での撮影には単純に有利です。
D850 + Carl Zeiss Otus 1.4/55mm + Starry Night filter, ISO 2000, F 2.0, SS 13 sec
さらにその明るさゆえにハイスピードシャッターを切るにも有利ですし大きなボケも楽しめます。
D810 + Tamron SP 90mm f2.8 DI VC USD Macro 1:1 (F004), ISO 4000, F4, SS 1/1600sec
D850 + Carl Zeiss Otus 1.4/55mm, ISO 125, F 2.8, SS 1/5 sec
あとは固定された焦点距離で撮影するという縛りが意外と楽しいというのはあるかもしれませんね。
~終わりに~
そもそも今回調べてみようと思ったきっかけはズームレンズで撮影をしていて「めっちゃ解像するなぁ」と感じたり、単焦点レンズで撮影していて「こんだけ絞るならズームレンズで十分じゃない?」と何度も感じたことにあります。
ラボテスト結果をもとに比較検討を行ってみたところ自分の印象と同様、いずれのレンズも良い解像度を示してくれました。
単焦点レンズの明るさはボケ表現で有利に働きますしより暗いシビアな環境ではやはり重要です。ただ、ズームレンズは便利だけど解像力を犠牲にしているという方程式は古い概念になりつつあるのではないかなと思っています。これがこの記事のテイクホームメッセージです。
長い記事でしたがお付き合いくださいましてありがとうございます。皆様の撮影の何かの参考になればいいなと思います。
それでは今回はここで失礼いたします m(_ _)m