NIKON 100周年記念日であった先日、D850開発中という発表がありました💡
スペックは未発表ですが、このD850に関しては前々からD810以上の超高画素機になるという噂です。D810は3635万画素なので、4500万画素とかでしょうか?
これにちなんで今回のテーマは、「高画素化は歓迎すべきことなのか?」です!
せっかくなので前回解説した"dpi"を使って考察してみたいと思います。
※計算式が多い内容ですし、かなり長い記事です( ゚Д゚)
※もう先に謝っておきます、ごめんなさい m(_ _)m
~高画素=高画質?~
NIKONのフルサイズ一眼レフは以下のようなラインナップです。
それぞれの有効画素数を載せておきます。
・D5 → 2082万画素
・D810 → 3635万画素
・D750 → 2432万画素
・D610 → 2426万画素
・Df → 1625万画素
この中でD810は頭抜けて高画素ですね!
基本的には「高画素=高画質」は間違ってはいません。
例えば以下の3枚の写真を比べてみてください。
画素数が上昇するに従って、だんだん画質がよくなりますよね?
さて、ここで問題です。
D810 (3635万画素) はD610 (2426万画素) よりもはるかに高画質なのでしょうか?
ここでポイントになるのは「300dpiを超えると肉眼で判断できなくなる」という点です。Dpiは前回説明させてもらいました💡
前回、例に挙げたブログサイズの16 × 10 cmの写真を例に挙げましょう
16 × 10 cmということはだいたい6×4インチです (1インチ = 2.54 cm)。
従って、D610 (6016×4016ピクセル) の場合以下のように計算できます。
D810 (7360×4912ピクセル) の場合はこうなります。
1000 dpi vs 1200 dpi!
両者とも300 dpiは優に超えますね!
違いなど分かろうはずもない ( ̄▽ ̄)
〜どこまで引き伸ばせるんだ??〜
逆にどこまで引き延ばすと300 dpiを切るのか計算してみましょう♪
計算式が難しいですが、これが理解できていればdpiの計算はもう免許皆伝です💡
がんばりましょう!
まず、D610の場合 (6016×4016ピクセル) です。
これが300dpiになる場合の長辺の長さをLインチとします。
図で書くとこういうことです。
従って、6016 ÷ L = 300という方程式になります。
これを解くと、L ≒ 20インチ
20インチは20×2.54 = 50.8 cmです。
D610の写真は長辺50cm近くまで伸ばしても300 dpiを確保できるということです。
同じ計算を7360×4912ピクセルのD810でやってみてください。長辺で62 cmくらいまで引き延ばしても300 dpiを維持できるという結果になると思います。
※計算方法も一応載せておきます。
50cmとか62cmとか、ピンときませんよね?
A3でだいたい42cm×30cmです。
D610でもD810でも、A3以上に引き延ばしても全然余裕ということです!
※A判、B判の覚え方を記事の最後におまけとして記載しますので興味のある方はご覧下さい。
~高画素機の問題点~
このように、少なくとも通常のパソコン画面で確認する限り、高画素でないからダメということはありませんね。むしろ高画素化のデメリットを覚えて頂きたいと思います。
(1) 1枚1枚が重くて管理しづらい
D610のJPEG写真が10MB前後なのに対してD810は25MB近いです。
RAWも入れたらD810は一枚で60MB前後!100枚撮っただけで6GB!
すぐにSDカードはパンパンです💦
(2) 連射性能が低くなる
こんな重いデータなので連射速度は制限されます。
(3) 高感度耐性が落ちる
これは有名な話なので解説しましょう。
そもそも画素数は画像素子 (以下センサー) をどれだけ細かく分解しているかということです。分かりやすく9画素と25画素を例に挙げるとこんな感じです。
で、この四角形が光を受けるのですが、これらを信号に変換する装置なども必要なので本当はこんな感じです。
どうでしょう、9画素の方が25画素より一つ一つの四角形がだいぶ大きいですよね?
ISO感度を上げるということは一枚一枚の四角形 (= 素子) に当たった光量を増幅させるということです。大きい素子の方が単位時間当たりたくさんの光が当たるので無理なく増幅できます。
ちょっと脱線しますが、「フルサイズが高感度に強い」というのもこれで説明できます。同じ画素数でもセンサーサイズによって一つ一つの素子の面積は変わりますよね?
例えばフルサイズセンサーとAPS-Cセンサーを比べてみましょう。
下図のようにフルサイズの方が1つ1つの素子の受光面積が広いので高感度耐性が強いのです。
話を戻します。
同じセンサーサイズでは画素数が小さい方が、1つ1つの素子がより多くの光を受けられるので高感度耐性は向上します。これ、大事ですよ (/・ω・)/
フラッグシップであるD5が2082万画素なのは、暗い環境であっても動体撮影を要求されるプロに応えるために、高感度耐性や連射性を確保するためなのです💡
☆補足です:
もっともD610とD810を比べてD810の方が明確に高感度に弱いかというとそうでもないんですけどね。話が長くなるので多くは触れませんが、「画像処理エンジン」が日々進化していてD810はEXPEED4というD610のEXPEED3より高度なものを積んでいるのが理由の一つです。
また、画素ひとつひとつのノイズが増加しても、素子が小さくなった分ひとつあたりのノイズは目立ちにくくなるので、全体で見ると画素数が上昇したからといって強烈にノイジーにはなりません。
(4) ダイナミックレンジがやや小さくなる
個人的にはあまり意識したことはありませんが、理屈的にはやや白飛びや黒潰れが生じやすくなるようです。
(5) 手振れしやすくなる
高画素機ほど手振れの影響を受けやすくなります。ちょっとややこしい話なので、理屈は最後におまけで説明します。興味のある方は後で見てやってください。
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ということで、高画素化にはデメリットもついて回ります。
「~画素の高画質!」という言葉は鵜呑みにしないで下さい ( ̄▽ ̄)
~超高画素機のメリットは?~
さて、高画素化のネガティブな側面ばかり強調してきましたが、私が高画素機のD810を使い続けているのはメリットもあるからです。
それは以下二点です。
・諧調性が豊かである
・トリミング耐性に優れている
細かい色まで再現できるので諧調性は豊かになり、いい条件であればよりシャープな画像になります。三脚に固定しISO 100で撮影すると非常に鮮明な画像が得られます。
故にD810は風景撮影と非常に相性がいいと言われているのです。
しかし、意外とちょっとした動きものにも悪くありません💡
トリミング耐性に優れるということはスポーツや鳥など素早くて構図を決めにくい時にも有効ですし、クロップすればAPS-C機のような疑似望遠効果も得られます。
これが私がD810を使用している理由です!
とはいえ、やはり高感度耐性は決して良好ではなく、薄暗がりでは不便さを痛感します ( ̄▽ ̄;)
~まとめ~
<高画素化のメリット>
・諧調性が良く風景など繊細な線の描写に強い
・トリミング耐性が強いので意外と動きものにも対応できます
・より大きく引き延ばしてプリントできる
<高画素化のデメリット>
・写真データが大きいので連射性が落ちる
・写真データが大きいので管理が大変
・1画素当たりの受光面積が減少
→ 高感度耐性低下&ダイナミックレンジの制限
・レンズの粗が目立つ
・手振れが目立つ
~今後について~
冒頭にも記載した通りNIKON 100周年にD850が正式発表されました。
更に高画素化し4500万画素以上になるという噂です。一方、画像処理エンジンを強化し高感度耐性や連射性の改善が期待されています。
ただし、高画素化が至高の進化でないことは今回の記事を読んで下さった方なら納得して頂けると思います。
更なる高画質化を目指すならどうするか?
個人的にはいっそセンサーサイズを中判サイズまで大きくして、ミラーを除去して小型化できたらいい、と考えています。
ハッセルブラッドやフジフィルムは既にその領域に着手しているので、NIKONにも同じような機序か、はたまた別の方法論で是非頑張って頂きたいです!
今後に期待しています♪
~終わりに~
凄く理屈っぽいことを延々と語りましたが皆さん読んでくれるんでしょうか^^;
堅苦しい話の後は、一回だけビールネタ挟ませていただきます♪
これからも何卒よろしくお願い致します m(_ _)m m(_ _)m
~おまけ1~
A判B判の覚え方です。
いずれもA0とB0が基準で、長辺の長さを1/2したものがA1とB1です。さらに長辺の長さを1/2したものがA2とB2という計算です。図解するとこうなります。
ですからA0とB0の大きさを暗記すればA4もB5も計算して出せるようになります♪
・A0は1189 × 841 mm (→ いい役、やよい)
・B0は1456 × 1030 mm (→ 石ころ、通さんぜ)
と、語呂合わせで覚えています ( ̄▽ ̄)
~おまけ2~
高画素機が手振れを起こしやすくなる理由です。ちょっと難しいので、本当に興味のある方だけご覧ください💦
D810を例に挙げます。3635万画素のうち、APS-Cセンサーと同じ範囲のみ使用して撮影することを考えましょう (これをクロップといいます)。すると、この範囲の画素数はおよそ1600万画素です。
つまり3600万画素のフルサイズ機を使用するということは、疑似的に1600万画素のAPS-C機を使用するのと同じ感覚です。
例えば50mmのレンズを使用するとしましょう。一見、フルサイズ機に50mmレンズを装着しているだけですが、高画素機なので「1600万画素のAPS-C機に35mm換算で75mmのレンズを装着している」つもりで撮影しなくてはいけません。
従って、手振れしないようにするにはSS 1/50 sec未満ではなく1/75 sec未満でないといけないということです。
(2017-08-03訂正)
上述のように「拡大したときにブレが目立ちやすい」というのは事実だと思っていますし、シャッタースピードが速いほうが手振れは目立ちにくいです。しかし、それが目立たなくなる速度が"1/75 sec"ということは根拠薄弱と考えましたので訂正させて下さい。
御指摘下さったしんさん、ありがとうございます!