いきなりですが写真撮影とはどんな作業でしょう?
① 被写体を見つけて構図を考える
② 露出を調整する
③ ピントを調整する
④ そしてレリーズを切る
ということです。
※場合によってはレンズを交換するとか三脚を立てるとかはあるでしょうが。
この中で、一眼を始めた頃に一番困るのは「露出調整」だと思います。
何故なら、構図を決めたりピントを合わせたりは携帯のカメラで誰もが慣れています。
一方で携帯カメラの場合、露出調整は機械が勝手にやってくれるので馴染みがないのだろうと推察します。
自分もそうでした^^;
しかし一眼では露出調整は必須のスキルです!
これを理解することでイメージ通りの写真を撮影できるようになります。
すなわち、意図を持ってボケ量をコントロールしたりシャッタースピードなどをコントロールできるようになります!
露出調整はISO感度、シャッタースピード (以下、SS)、そしてF値の3つの変数を調整して決めます。今日は特にF値に焦点を合わせた内容です。
正直、小難しい話が多いですが、このエントリーを理解すればきっといいことがありますから時間のある方は是非読んでみてくださいませ!
※このエントリーには数字がたくさん出てきますが (一番最後のおまけ以外は) ほとんど算数、行っても中学数学レベルのことなので苦手な方もメゲずに頑張ってくださいね^^;
~F値が意味するところ~
これは多くの方がご存じでしょうが、念のため確認です!
F値は「レンズの絞り」がどれだけ開放しているか、または絞られているかを示す数値です。F値が小さいほど解放されている、大きいほど絞られているということです。
最近は電子制御のレンズも多いのですが、そうでなければ絞りリングを回せばこうして絞りが動くのが分かります。
f1.4 (このレンズの解放値です)
f2.8 (ちょっと絞られましたね)
f5.6 (かなり絞られてきました)
f16 (がっつり絞ってます)
~どういう意図でF値を変化させるか?~
一般に以下の4つの意図でF値は調整します。
① SSを速くしたいとき。または遅くしたいとき。
② ISO感度を下げたいとき。
F値が小さいほど、絞りは開放されているので通過する光量が多いです。従ってSSは速くできるしISO感度も下げることができます💡
例えばこの写真は水の動きを止めたかったのでF2まで解放してSS 1/1600 secで撮影できるようにしました。
この写真も敢えて絞り込まずF2.8に設定し、SS 1/2000 secで撮影しています。
③ 被写界深度を調整したいとき。
F値が小さいほど被写界深度が浅くなります。言い換えれば大きくボケます。一方、F値が大きいほど被写界深度が深くなります。ピントの合っている範囲が大きくなるわけです。
例えばこの写真は光源のボケを生かしたかったので敢えてF1.4で撮影しています。
一方、同じレンズですが全体にピントを合わせたかったのでF14で撮影しています。
また、SSを長くして車の軌跡を撮影したかったという意図もあります。
④ F値が大きいほうが解像度が増します。
多くのレンズはF5.6~11あたりが解像度のピークなのではないでしょうか?
統計をとったわけではないのですが^^;)
収差が減りますからね。収差についてはこちらもご参照ください。
ただし、あまりにも、例えばF16やF22まで絞ると「解析現象」という現象で解像感が落ちますのでご注意ください。
冒頭にもお話しした通り、露出の調整はSS, ISO感度、F値の3種類の変数の調整です。
F値が小さくなるとSSは速くできる、またはISO感度は小さくできる。
逆にF値が大きくなるとSSを遅くするかISO感度を上げる必要がある。
この関係は基本中の基本なのですが、実際に計算できますか??
これは初耳学!
という方にとってはきっと有用な情報ですから、是非覚えてください💡
フォトマスター検定でも毎年必ず計算問題が出題されます。
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例題:
ISO 200, f2.8, SS 1/2000 secが適正露出だったとします。
(1) あなたは「もっとSSを早くしたいな」と思い、f2まで下げることにしました。さて、ISO 200, f2にした場合、SSはいくつになるでしょうか?
(2) 逆にあなたが「もっと解像感が欲しいな」と思い、f5.6まで上げることにしました。さて、ISO 200, f5.6にした場合、SSはいくつが適正でしょうか?
(3) 最後に、「あ!しまった、ISO 100で撮影したいんだった!」と思いましたがシャッタースピードは1/2000 secのままにしておきたいとします。さて、ISO 100, SS 1/2000 secの場合、f値はいくつが適正でしょうか?
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さあ、これが今日一番難しい話です!
<解説>
まずこの問題を解く上で鍵となる知識をお伝えしますね。
F1.4 → 2.0 → 2.8 → 4.0 → 5.6 → 8 → 11 → …
このように一段階絞るごとに絞りを通過する光量は1/2倍になります。
言い換えれば一段絞るごとにSSまたはISO感度は2倍必要になります。
・・・絶対わかりにくいと思うので例を挙げて説明させてください!
(例)
・F2.0からF2.8にした場合、1段絞られたわけですから通過光量は1/2になります。このままでは写真が暗くなってしまいますから、そうならないようにSSを2倍にするかISO感度を2倍にすればいい。そうすればほぼ同じ明るさの写真が撮れます。
→ これを専門用語でいうと、「露出は変わらない」ということになります。
もっと例を挙げましょう。
・F2.8からF4.0に上げた場合も一段階絞られているから、SSを2倍にするかISO感度を2倍にすることで同じ明るさになります。
・F2.0からF4.0に上げると二段階絞られたわけですから、SSを4倍にするかISO感度を4倍にするか、SSとISO感度を両方2倍にすれば同じ明るさになります。
いかがですか?ご理解いただけましたか!?
では先ほどの問題の答えをお示しします!
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ISO 200, F2.8, SS 1/2000 secが適正露出だったとします。
(1) あなたは「もっとSSを早くしたいな」と思い、f2まで下げることにしました。さて、ISO 200, f2にした場合、SSはいくつになるでしょうか?
===>
ISO 200, F2.0, SS 1/4000 sec
(2) 逆にあなたが「もっと解像感が欲しいな」と思い、F5.6まで上げることにしました。さて、ISO 200, F5.6にした場合、SSはいくつが適正でしょうか?
===>
ISO 200, F5.6, SS 1/500 sec
※2段絞っているからSSは1/4になります。
(3) 最後に、「あ!しまった、ISO 100で撮影したいんだった!」と思いましたがシャッタースピードは1/2000 secのままにしておきたいとします。さて、ISO 100, SS 1/2000 secの場合、F値はいくつが適正でしょうか?
===>
ISO 100, F2.0, SS 1/2000 sec
※SSは1/2000で固定ですからISOとF値だけを見ればいい。ISO感度が1/2になるのでF値は1段開放されたらいい。F2.8より1段開放は2.0なのでf2.0が正解です。
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~F値の暗記方法~
SSやISO感度は2倍したり1/2倍したりで簡単なのに、なんかF値は覚えにくい。
1.4 → 2.0 → 2.8 → 4.0 → 5.6 → 8.0 → 11 → 16 → 22 → …
実際のレンズにもこの数字は書かれています。
こんな感じで1.4〜16の数字が並んでいるのが確認できます。
これの覚え方を紹介します💡
「1.4」と「2.0」を覚えてもらえたらOKです!
これらを倍々してみましょう。
・1.4 → 2.8 → 5.6 → 11.2 (≒11) → 22.4 (≒22)
・ 2.0 → 4.0 → 8.0 → 16.0
これを重ねれば上の数列になりますよね?
※または
1.4×√2 ≒ 2.0
2.0×√2 ≒ 2.8
2.8×√2 ≒ 4.0
という等比数列で覚えるのもOKです。
〜最後に〜
なるべく一つのエントリーにまとめてみたかったので、盛りだくさんでしたね💦
F値とISO感度とSSの関係は、はじめて勉強したとき、難しいと感じましたがこれを理解すると便利ですよ?
例えば、ISO 400でSS 1/100が適正として、ISO 100まで下げるとSS 1/25になりますから撮影する前に手振れしそうだなって分かります。
あと、夜景のマニュアル撮影時にf5.6からf8.0に絞るとSSは2倍必要ですから5秒 → 10秒にすればいいとかすぐに分かります。
この記事が少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです!
とはいえ、週の頭からややこしい話題ですいませんでした m(_ _)m
肩がこる話の後は、一回ビールネタでもはさみましょうかね。
それではまた、よろしくお願いします!!
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~おまけのマニアックなお話①:そもそもF値ってなに?~
F値は英語でFocal Numberです。
F値 = (焦点距離) / (レンズの有効口径)
上記の式で定義されます。
レンズの有効口径の逆数ですから絞りを絞って口径が小さくなればF値は逆に大きくなります。
~おまけのマニアックなお話②:なぜF値は√2が関係するのか?~
F値はどこで制御しているかというとレンズの後方についている絞り羽です。この開閉でレンズを通過する光量を調整しています。
従って、ほぼ円形です。
光量を半分にするためにはその面積が半分にならなければいけません。
ある絞りの半径をRとします。その絞りの半分の面積になる半径をrとします。
円の面積「(円周率) × (半径)^2」ですよね?
ということは (πR^2) × 1/2 = πr^2
この方程式を変形するとr = R×1/√2となります。
これをF値の式に代入してみましょう。
F = (焦点距離) / R ・・・①
F’ = (焦点距離) / r ・・・②
とします。r = R×1/√2でしたから、②に代入すると
F' = (焦点距離) / (R×1/√2) = √2 × (焦点距離) / R
①を代入すれば
F’ = √2 Fです。
これがF値が√2倍になるごとに単位時間あたり通過する光量が1/2になる理由です。
まあ、こんなこと知らなくてもいいのでしょうが、興味のある方のために書きました。
あくまで、おまけです。
~おまけ③ 大口径、スピードレンズという言葉~
レンズの紹介で時折耳にする言葉です。
どちらも最小F値が小さいレンズを表す専門用語です。