Circulation - Camera

巡る季節を写真に残す! ~Since 2017-05-01~

被写界深度の計算式を、実践的に味わおう!

こんにちは、Circulation-Cameraです。

以前、過焦点距離という概念について記事をまとめてみました。

子難しい話なのに多くの方にご覧頂き、驚きました!

みなさん、写真大好きなんですね♪

今回はそれに関係した被写界深度の計算方法をご紹介します。

今回もそこそこ小難しい話ですので、興味のある方は時間があるときに読んでやって下さいませ💦

※ちなみに、被写界深度の計算をするためには焦点距離の計算は不可欠ですから、「過焦点距離??」という方は先に上記リンクを読んで頂けたら幸いです

※一応、概説すると過焦点距離「これ以上遠方にピントを合わせると無限遠にもピントが合っているように見える距離」です。

※過焦点距離 = (レンズの焦点距離)^2/許容錯乱円×F値

 

被写界深度って何?~

被写界深度とは「ピントが合っているとみなせる範囲」を指します。

例えばこの写真は「イチョウの落ち葉とドングリ」にピントを合わせていますが、その前後にもピントが合っていると見なせる範囲がありますね。

DSC_3481


このピントが合っているとみなせる範囲はどのくらいか計算できるのです💡

先に結論からいうと、

・ピントを合わせている部分までの距離をXメートル

・過焦点距離をYメートルとすると、以下の式で計算できます。
手前側 A = XY/(Y+X)

後側 B = XY/(Y-X)

f:id:tatsumo77:20171202151942j:plain


大丈夫ですか??💦💦

式に怖がって閉じないで下さいね ^^;

 

この式からどんなことが分かるか、

一緒に味わってみましょう♫

そして今日のテーマは「実践」です!

ただ計算式を解くのではなく、

実際の撮影に役に立つように解説していきます

ということで頑張りましょう (`・ω・´)b

先に今日のメニューです♪

(1) 被写界深度は手前側より後側に長い!

(2) マクロ撮影ではピント面は極薄です!

(3) マクロ撮影は絞っても被写界深度は大差ない!?

(4) 手前から奥までピントを合わせる方法は??

 


~(1) 被写界深度後側に長い!~

まずはこれについて解説します。

ピントが合っているとみなせる範囲はピント位置の手前より奥側に長くなることを実際に証明してみます。

f:id:tatsumo77:20171202152113j:plain

ピントより後の長さ:B-X = XY/(Y-X) - X = X^2/(Y-X)

ピントより手前の長さ:X-A = X - XY/(Y+X) = X^2/(Y+X)

分母であるY+XはY-Xより大きいので、

B-X > X-A

つまり、ピントより後側の距離の方が長くなります💡

※Y≧X>0

ちなみに、以前の記事のブックマークでこのようなコメントを頂きました。

f:id:tatsumo77:20171202120249p:plain


何段ある集合写真かは分かりませんが、

2段目に合わせれば1段目もボケませんし、

後側に被写体深度は長いので3~4段目もボケない

ということではないでしょうか!?

f:id:tatsumo77:20171202153136j:plain

※ただし、この法則はマクロ撮影では目立たなくなります。

 

 

~(2) マクロ撮影はピント面が極薄!~

次のテーマに移ります。

感覚的にも理解しやすいことでしょうが、マクロ撮影、すなわち被写体に寄るほど被写界深度は浅くなります。

DSC_1059


実際に計算してみましょう。

焦点距離100mmのレンズをフルサイズカメラに装着してF8で撮影する場合」

を例に挙げます。

・10メートル先の被写体にピントを合わせる場合

・0.3メートル (要は30cm) 先の被写体にピントを合わせる場合

で比較します。

※なお、この記事では許容錯乱円は0.03と仮定します

 

この場合、焦点距離Yをまず計算して、

Y = (100)^2 / 0.03 × 8 ≒ 41666

したがって、約42メートルです。

① 10メートル先の被写体にピントを合わせた場合、

A1 = 10×42/(42+10) ≒ 8メートル

B1 = 10×42/(42-10) ≒ 13メートル

したがって、以下の図のようになります。

f:id:tatsumo77:20171202153229j:plain

前側2メートル、後側3メートルはピントが合っていると見なせるわけですね💡

 

② 一方、30cm先の被写体を撮影する場合、

A2 = 0.3×42/(42+0.3) ≒ 0.2979

B2 = 0.3×42/(42-0.3) ≒ 0.3022

すなわち29.78cmと30.22cmです。

つまり、ピントを合わせた部分の前21mm, 後ろ22mmにしかピントは合わない計算です!
薄っ!!

Σ(・□・;)

f:id:tatsumo77:20171202153304j:plain

 

 

~(3)マクロ撮影、F値を絞っても…~

ということで、初心者がマクロ撮影をすると、

思った以上に被写界深度が浅くて戸惑います💦

こうなると、必然的にF値を大きくして対応したくなりますね。

F値が大きいほど被写界深度が大きくなることは一般常識 (?) ですから。

しかし、F値を大きくしてもパンフォーカスを得ることは難しいです。また、かなり絞らないと期待しているほど被写界深度は広がりません

これも計算してみましょう。

焦点距離100mmのレンズで30cm先の被写体を撮影する場合を考えます。

・F2で撮影する場合

・F5.6で撮影する場合

・F16で撮影する場合

を比べてみましょう。

<F2の場合>

焦点距離は (100)^2 / 0.03×2 ≒ 167メートル

A = 0.3×167/(167+0.3) ≒ 0.29946

B = 0.3×167/(167-0.3) ≒ 0.30054

29.946cmと30.054cm!

前後0.054mm!!

笑っちゃうほど薄いですね!

 

<F5.6の場合>

焦点距離は (100)^2/0.03×5.6 ≒ 59.5メートル

A ≒ 29.85cm

B ≒ 30.15cm

F5.6まで絞っても前後1.5mmです。

 

<F16の場合>

焦点距離は (100)^2 / 0.03×16 ≒ 21メートル

A = 0.3×21/(21+0.3) ≒ 0.29577

B = 0.3×21/(21-0.3) ≒ 0.30435

29.58cmと30.44cmです。

前後およそ4.3mmが被写界深度です。

確かに被写界深度は広がりましたが、これだけ絞ってもこの程度です。

従って、ピント面が薄いからと言って多少絞るくらいでは思ったより、被写界深度は広がりません。

実際の写真も載せてみましょう。

実際の写真の場合、ボケ量が変化するので、印象は変わると思います💡

紫色の帯にピントを合わせ、被写界深度で示しました!

 

D810 + Milvus 2/100mm, ISO 100, F2, SS 1/4 sec

DSC_3539のコピー

D810 + Milvus 2/100mm, ISO 100, F5.6, SS 2 sec

DSC_3540のコピー

D810 + Milvus 2/100mm, ISO 100, F16, SS 15 sec

 

DSC_3538のコピー

どうですか?

マクロ撮影で深い被写体深度を得ることは難しいことが伝わりましたでしょうか!?

 

~参考~

ちなみに、同じ100mmレンズを装着してマクロでない場合はどうでしょう

例えば10m先の被写体を狙ってF2とF16で計算します。

すると…

<F2の場合> A5 = 9.43メートル, B5 = 10.64メートル

<F16の場合> A6 = 6.8メートル, B6 = 19.1メートル

f:id:tatsumo77:20171202153345j:plain

f:id:tatsumo77:20171202153606j:plain

どうですか?

絞った分、だいぶ被写界深度が広がりますのでマクロ撮影の時とは全然違います!

 

~補足~
ここでいう「カメラからの距離」はすべて撮像素子 (センサー) からの距離です。

レンズの先端からの距離ではありませんよ ( ゚Д゚)💡

f:id:tatsumo77:20171202153626j:plain

 

〜(4) 手前から奥までピントを合わせたい!~

本日最後のテーマです。

いわゆるパンフォーカス写真の撮り方ですね。

先に結論を言うと、「過焦点距離にピントを合わせる」です。

すなわち、「X = Y」で撮影するといいでしょう。

先ほどから何回も出てきていますように、

A = XY/(X+Y)

なので、X = YではA = Y/2です。

これは言い換えると、ピント位置が過焦点距離になるとき、ピント位置までの距離の半分が被写界深度に含まれるということです。

たとえば35mmのレンズをフルサイズカメラに装着した場合を考えます。

F8で撮影する場合は、

焦点距離が (35)^2/0.03×8 ≒ 5.1メートル

したがって、ピントを5m先に合わせると、その半分である手前2.5mまでピントが合うことになります。

f:id:tatsumo77:20171202153518j:plain

 

写ルンです

f:id:tatsumo77:20171202145708p:plain

※引用:富士フィルムHP:http://fujifilm.jp/personal/filmandcamera/utsurundesu/promotion/lf30/

 

写ルンです」ってありますよね💡

あれは実はこの理屈を使用しています。

写ルンです」のレンズは焦点距離32mmでF10固定です。

これで過焦点距離を計算すると、(32)^2/0.03×10 ≒ 3.4メートル

明記されてはいませんが、3メートル先をピント位置にしているとしたら下の図のようになります。

f:id:tatsumo77:20171202153708j:plain

このように広い範囲にピントが合うため、写ルンです」にはピント合わせが必要ないのです。
逆に言えば、被写体に近づきすぎるとピントが合わなくなります。

 

※※「写ルンです」のパッケージには「1m~無限遠までピントが合う」とされています。1.7mより近いのは何故でしょうか?厳密には焦点距離30.5mmとかFが10.6とかなのかなぁ。それとも画像がやや粗いので多少ボケていても1メートル手前くらいまではピントが合っているとみなせるからなのか。。。
どなたかご存知でしたら教えてください m(_ _)m

 


APS-Cフォーサーズカメラの場合~

APS-Cフォーサーズでも、この式は適用できます💡

ただし、焦点距離」は装着したレンズの焦点距離をそのまま代入してください。

50mmレンズをNIKONAPS-C機に装着すると75mm相当の画角が得られますが、

75mmではなく50mmを代入して計算してください。

 

 

~補足:許容錯乱円~

前の記事の最後にも書きましたが、高画素化し拡大して写真を鑑賞する機会も増えてき

た昨今では許容錯乱円0.03は甘いです。

実際には0.004とか、もっと小さな値を代入しないといけないようですね。

興味のある方は、こちらもご参照くださいませ m(_ _)m

tatsumo77.hatenablog.com

 

~まとめ~

今日は「被写界深度」にフォーカスを合わせてみました。

ただ被写界深度の計算式を紹介するだけでは味気ないのでこの計算式をもとに、

(1) 被写界深度は手前側より後側に長い!

(2) マクロ撮影ではピント面は極薄です!

(3) マクロ撮影は絞っても被写界深度は大差ない!?

(4) 手前から奥までピントを合わせる方法は??

などをなるべく論理的に説明してみました!

 

長い話でしたが、参考になってくれたらうれしく思います。

もし計算間違いや勘違いしている点がありましたら、コメント欄にご指摘お願いいたします!

それでは今日はこの辺で失礼します。

またよろしくお願いします m(_ _)m