前回予告しました通り、今回は私がもっとも好きな3本のレンズ (下記の記事もご参照下さい) の最後の1本を紹介します。
これまでこのブログで御紹介したのはこの2本ですよね。
・Carl Zeiss Distagon 2.8/15mm
・Carl Zeiss Apo Sonnar 2/135mm
それぞれ超広角と中望遠において私が絶大な信頼を置くレンズです。
いつも世話になっていますm(_ _)m
そして標準域はこれです。
Carl Zeiss Otus 1.4/55mm
オータスと読みます!
これもApo Sonnar 2/135mmやDistagon 2.8/15mmと同じく、手振れ補正もオートフォーカスもない単焦点レンズですが、凄まじい描写のポテンシャルを有する1本です。
「世界最高の標準レンズ」「中判を連想させる画質」「カラーフリンジの追放」などカメラ好きを魅了するワードを、Carl Zeissが自社のホームページで並び立てています。
そのかわりお値段もぶっとんでいます。
※御存じない方はググってみてください。多分、引きますよ^^;
当たり前ですが、購入するか相当迷いました。けど、どうせこれだけCarl Zeissレンズのファンになってしまってですよ、しかもNikon Fマウントで今後もやっていくのなら絶対いつかは購入するだろうと考え、やっちまいました( ̄▽ ̄;)
去年の1月にやっちまった気がします。
〜使用してみた感想〜
実際にここ1年半くらい使用して感じたこのレンズの利点・欠点を箇条書きで挙げてみます。
利点:
・収差らしい収差がないすっきりした描写
・ハイコントラスト
・色が鮮やか
・解放から描写的に満足できる
・強力な逆光耐性
・歪みがほとんどない
欠点:
・それほど寄れない (最短撮影距離 0.5 m)
・口径食はかなり出る
・周辺光量落ちが開放では目立つ
・カリッカリの描写すぎて花のようなふんわりしたものは苦手
・重い (970 g)
・あくまで55mmの単焦点レンズである
・オートフォーカスなし
・手振れ補正なし
・防塵防滴シーリングなし
あまりOtusの作例というかレヴューってネットにも見かけませんし、この機会に御紹介してみます!
〜作例紹介〜
昨年1月に撮影した写真です。購入した直後ですね。アウトフォーカスの点光源は結構口径食が出ます。あと周辺減光はありますよね。
ISO 1000 f1.4 SS 1/80
トリミングしてみました。口径食などに関してはあれですが、開放からピント面はがっちり解像していますし質感や色の再現性も良好です。
Otusとはコノハズクというフクロウの一種につけられた学名です。
「夜目が効く」というイメージで名付けられたようです。
ISO 800, f1.4, SS 1/80
これは今年の1月に撮影しました。三脚に添えて一番右のチューリップにピントを合わせました。色乗りも悪くなく、ボケ味も悪くないように感じます。これもf1.4で撮影しました。
トリミングしてみました。
ここからは先日、横浜の日本丸メモリアルパーク付近を散策した時のものです。
なんだか同じようなことばかり書いていますが、開放での切れ味とボケ味の作例になればと撮影した写真です。ただ、f1.4ですからピント合わせは間違いなく難しいですよ^^;
メタリックな質感を切り取ってみました。
塗装の質感がしっかりしているのはもちろんのこと、歪曲収差は高レベルに補正されていて肉眼では少なくとも捉えきれません。
スナップ撮影を試みましたがピント合わせが本当に難しいです。帽子に合わせたかったのですがカバンになってしまいました。それでも被写体が引き立つのは、なだらかにアウトフォーカスに移行している証拠だと思います。
どうでしょうか?
拙い作例ですが、パワーが少しでも伝わってくれれば嬉しいです!
ただ、どのようなレンズにも得手不得手があります。
ここまでの写真は夜間や室内で撮影したものですが、ここからは日中の光量の多い屋外での撮影です。
実は私、日中の使用に関してはやや疑問があります。
すなわち、光量の多い時間帯にわざわざオートフォーカスもズーム機能もないレンズを選択する必要はない気がするのです。
もちろん写りに文句はありません。
ポートレートなら大口径レンズならではの表現も楽しめるでしょう。
でもNIKKOR 24-70mm f2.8のようなズームレンズや、オートフォーカスのついたNIKKOR 58mm f1.4やSigma 50mm f1.4だっていいではないかと思うのです。
では、日中の作例を。
トリミングしてみました。D810の高画素が繊維を鮮明に書き分け、フリンジがない故にピントのあった被写体と距離のある背景はくっきりと分離されます。
そう、写りそのものには文句はないのです。
ですが、問題はここに至るまでの労力です!
眩しい中、風に揺れるこの被写体にピントを合わせるのはかなり大変です。
オートフォーカスがあればと嘆きたくなる人がマジョリティなのではないでしょうか?
下の作例を見てください。石の本が白い花に囲まれて叙情的な雰囲気です。
さて、果たして55mである必然性がありますでしょうか?
構図も良くないのは承知していますが、いっそApo Sonnarで本に寄って周囲の白い花をボカした方が簡単にいい絵になりそうだな、と思いながら撮っていました。
また、ApoSonnar以上にカリッカリに映る上に寄れないので、花は苦手な被写体かもしれません。私はまだOtus 1.4/55mmで日中の花をうまく撮れた記憶がないです^^;
やはりレンズの特徴を理解することは重要です。
今回、ポトレ的な撮影はほとんどしませんでしたが、散歩の最後の方に日傘をさした女性の後ろ姿を撮影してみました。動く被写体にピントを合わせるのはほぼ無理と諦めていますので、ピントを先に送っておいて被写体が入ってきた瞬間に撮影する「置きピン」の技法で撮影しました。
トリミングしてみました。日傘や服の質感再現性は良いです(`・ω・´)b
やはりフクロウなんでしょう。昼間より夜や室内など光量が少ないところでこそ特徴を感じやすいと考えています。
逆光耐性も良好です。右の照明にピントを合わせました。
派手なゴーストやフレアが出たことはありません。
〜ピント合わせが難しい理由〜
これまで御紹介してきたApo Sonnar 2/135mmやDistagon 2.8/15mmでは、あまり「ピント合わせが難しい」と泣き言を言ったことはないのですがOtus 1.4/55mmはなぜしきりにピントが合わせが難しいというのか?
2つ理由があります。
① f1.4の被写体深度はそもそもシビアという点。
② 55mmという画角ゆえにピントピークが掴みづらいという点。望遠レンズは被写体が拡大されるので案外ピントを合わせやすいです。超広角レンズは基本的にパンフォーカスで撮影しますし、超広角レンズはそもそも被写界深度が深くなります。
※被写界深度 = ピントが合っているとみなせる範囲のことです
ですから同じマニュアルフォーカスレンズでも難易度が段違いです!
これは個人的な意見ですが28mm〜60mmは、ファインダーの性能などにもよるのでしょうが、かなりピント合わせが難しいと思っています^^;
〜夜間の風景撮影〜
話を作例に戻しましょう。
収差が少ないので三脚を使って夜間に絞って撮影するのにも向いています💡
手持ち撮影が薄暗がりで獲物を狩るフクロウの姿なら、三脚に立てて絞った時はさしずめ木に止まって獲物を狙い凝視する姿です。
…ちょっと何を言っているか分かりませんね、言ってみたかっただけです^^;
まあ、それはおいといて、画角さえ合えばどんな場面でも安心して使えます。
隅々まで全く隙のない描写です。左上と右下をトリミングして拡大した写真とともに掲載しておきます。ISO 64, f14, SS 25 sec。
右下
〜まとめ〜
実力不足で全然扱いきれていないのが作例からひしひしと伝わってしまったかもしれませんが、まとめです!
・最大の特徴は圧倒的解像力です。レンズは開放で使えばいいってものではないのですが、安心してf1.4から使用できますから幅広い表現が可能です。
・一方で欠点としてはオートフォーカスが無い、55mmの単焦点であるというものが実用上、大きいと思います。絞って撮影する機会が多い日中にはこうした欠点が特に目立てしまうと思います。
・Distagon 2.8/15mmやApo Sonnar 2/135mmと違って焦点距離自体は標準と言われる55mmですから焦点距離が生み出すインパクトは薄いと思います。
・また、三脚に据えて撮影するならズームレンズの方が有利なケースが多いはずです。あくまで55mmなのです。85mmや24mmなどの方が向く被写体に対して必然性を無視して強引に使ったところでいい結果は得られないと思います。実際、私もまずはズームレンズで撮影して、55mmが有効と感じたときに本レンズに交換して使用することが多いです。
・ただ、ハマったときはどんな逆光や光が入り組んだ環境でもきれいに描き分けてくれる安心感があります。
〜ストラップ〜
ちょっと脱線ですが、冒頭の写真の青いストラップ格好良くないですか?
ワイズカメラさん限定のストラップです( ̄+ー ̄)
ワイズカメラさんは北海道の景色を撮影し続ける、私の大好きなブログです。
EIGHT レザーストラップとのコラボ企画の際に購入させてもらいました。
これからも愛用していきたいと思います!
〜最後に〜
今日ご紹介した通り、Otus 1.4/55mmは決して万能のレンズではありません。
しかし、せっかく清水の舞台から飛び降りて購入した機材なので今後もその特徴を生かして、納得のいく作品が撮れるように頑張ります!
一方で今回は「日中に向かず」という結論でしたが、それを打破する使い方も研究する姿勢が大切ですよね。
精進していきますので、これからも作例をシェアできれば幸いです。
それでは今回はこの辺で失礼します。
次回の記事は「収差」についてまとめてみようと思います。
また今後とも宜しくお願いします。