Circulation - Camera

Since 2017-05-01

カメラの豆知識 ~絞りを絞ると画質向上したり、ピントが広い範囲に合う理由~

こんにちは、Circulation - Cameraです。

みなさん、風景写真撮影していますか?

私は時間見つけて、相変わらず地道に楽しんでおります ( ̄▽ ̄)

こちらは最近撮影した横浜の夜景です。

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さて、突然ですが質問です!

こんな風景を撮影するとき、皆さんはどのくらいのF値で撮影しますか?

使用するのレンズは開放F値2.8、最大F値22で、ISO感度は100、シャッタースピードは三脚を使用するのでなんとでもなるとします。

① F2.8

② F8

③ F22

この三択ですと、多くの方はF8を選ぶのではないでしょうか?

それは何故か?

「F2.8とF8ではF8の方が画質が良いから!」

「F8の方がピントが合う範囲が広いから!」

「F22とか絞りすぎると画質が劣化するから!」

という回答が多いと思います。

それらは正しいと思いますし、実際私もこの写真はF8で撮影しています。

しかしちょっと待ってください。

・F2.8よりF8の方がどうして画質がいいのですか?

・F2.8よりF8の方がどうしてピントが合う範囲が広いのですか?

・なんでF22とかに絞りすぎると画質が劣化するのですか?

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NHKのHPから引用

土曜日朝の某5歳児に叱られる番組ではありませんが、今日はこれらのもはや一般論と化したF値に関する疑問に回答していきたいと思います。既にご存知の方には何の意味もない話かもしれませんが、「そういえばどうして??」っていう方の為に記事を今回は書きました。

ちょっと長い記事なので、興味のある方は時間のある時に読んでやって下さいませ。それではよろしくお願いします m(_ _)m

~先に結論を!~

絞ることで画質が改善することには、

① レンズの中心を主に使うことができるから

② 口径食の影響を受けないから

という理由があります。

絞ることで被写界深度が深くなるのは、

ピント面前後からの光も、

撮像面で大きく分散しなくなるからです。

ただし、光は波動なので絞りすぎると回折現象で、

画質低下することがあるので注意が必要です。

 

 

~そもそも絞りとは?~

絞りとは、一般にレンズ内ある機構で開いたり閉じたりすることで、レンズを通過する光の光路を調整することができます。F値はこの絞りの大きさを表した数値で、F値が大きくなるほど絞りは閉じていきます。

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左が絞りを開放した状態。右が絞りを多少絞った状態です。

これを図示するとこういう事です。

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難しいことは何も無いですよね。絞りが開いているほど単位時間当たりの光量が多くて、絞られているほど光は入ってきません

 

 

~F2.8よりF8の方が画質が良くなる理由~

では、どうして入ってくる光を制限すると画質が改善するのでしょうか?

簡単に言いますと、「絞るとレンズの中心だけが使用されるから」というのが大きな理由です。先ほども図で示したように、絞れば絞るだけレンズの周辺の光はカットされます。

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さて、レンズは周辺ほど性質が悪いです。性質が悪いというか、中心部ほど期待通りの光の曲がり方をしてくれません。もっと具体的に説明しますね。

理想的なレンズであれば、レンズを通過する光りがワンポイントに集まるのですが、実際のレンズでは周辺を通過する光ほど理想的なポイントに像を結んでくれないのです。下の図では理想的なレンズと現実のレンズの違いを比較してみましたので御参照下さい。

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なので、絞って周辺を通過する光をカットすれば画質は改善するというわけです。

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言い換えれば、絞ることでレンズの良質な部分だけを使用することができるという事です。これが絞りを絞ると画質が改善する理由です!

(`・ω・´)b

 

 

~口径食の影響~

絞ると画質が改善するのは、「絞るとレンズの中心だけが使用されるから」ということを説明いたしました。もう一つ、「周辺の画質に影響を与える口径食の影響が小さくなる」ことも絞ると画質が改善する理由です。

口径食について説明します。レンズの周辺に入ってくる光は絞りが開いていると円形ではなく楕円形になります。これは画像を見て頂ければ一瞬でお分かりいただけるかと思いますのでご覧ください。

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F1.4の場合、斜めから見ると円形ではないので光がきちんと入ってこない (= 口径食)
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一方、絞ってあげると口径食は改善されますので周辺の画質も安定します。

このように、口径食が絞ると改善することもレンズ周辺画質の改善に貢献しているというわけです ^^

 

〜実例提示〜

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この構図をF2.8とF8で撮影してきました。使用したのはD810とNIKON大三元標準域AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8E ED VRで、プロテクトフィルターは外していますので画質は問題ないはずです。

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その一部を拡大して見ましょう。

<F2.8>

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<F8>

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ブログでは圧縮されて分かりにくいかもしれませんが、F2.8では点光源の崩れや、パープルフリンジが目立ちます。また、解像感そのものもF8には劣っています。これらはレンズを通過した光が一点に集まらない結果だったり、口径食の影響だったりするのです。

「少し絞った方が画質が良い」といのは一般論ですし、多くのレンズに言えることだと思います。でもその理屈を知ってみるのも面白いですよね ^^

 

 

~ここまでのまとめ~

絞ることで画質が改善することには、

① 上質なレンズの中心を使うことができるから

② 口径食の影響を受けないから

という理由があるのです (`・ω・´)b

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~F2.8よりF8の方がピントが合う範囲が広くなる理由~

さて、絞ることで画質が改善することは説明できました。次はどうしてF値を大きくするとピントが合っている範囲が深くなるのかについて考えます。

ピントが合っていると見なせる範囲のことを被写界深度と言います。

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被写界深度は絞るほど深くなります。その理由は、絞ることでピントが合っていない箇所からの光の分散が小さくなるからです。これだけじゃ意味不明でしょうから、図で説明していきますね。

被写体Aにピントを合わせている状態を考えます。

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この場合、当然被写体Bから出る光は、フィルム面または撮像素子に分散して集まります。すなわち、ボケているということになります。

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しかし、絞ることでレンズ周辺から侵入する光がカットされ、分散の程度が和らぎます。すると絞っていない状態よりもBはシャープに見えるようになるわけです。

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これが絞りを絞るとピントが合っている範囲が広くなってくれる理由というわけです。

逆に言えばF値が小さいほどボケは大きくなります。実際、F値が小さいと点光源のボケが大きくなって、F値を大きくすると点光源のボケが小さくなりますが、それはピントが合っていない箇所から出た光の分散が大きいことが分かります。

実際の作例を提示します。F1.8で撮影した写真とF5.6で撮影した写真です。ボケの大きさが圧倒的に1.8の方が大きいですよね。これはピント面以外から来た光の分散が大きなことに起因するのです。

<F1.8>

DSC_2976

<F5.6>

DSC_2978

 

~おまけ:像面湾曲と絞り~

実は被写界深度が深くなることは画質改善にも貢献しています。古典的なザイデル5収差の1つに像面湾曲というものがあります。これはレンズが球形であるため、中央にピントを合わせると周辺が合わなくなる現象、または周辺にピントを合わせると中央にピントが合わなくなる現象です。

超広角レンズでは特に顕著なのですが、絞って被写界深度が深くなれば中央も周辺もピントが合うようになるというわけです。このように、被写界深度が深くなることも画質改善に影響している部分があるのです ^^

 

 

~ここまでのまとめ~

絞ることで画質が改善することには、

① 上質なレンズの中心を使うことができるから

② 口径食の影響を受けないから

という理由がある。

絞ることで被写界深度が深くなるのは、

ピント面前後からの光も、

撮像面で大きく分散しなくなるからです。

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~回折現象とは?~

さてさて。絞りを絞る、すなわちF値を大きくするとレンズの中央部だけを使用するし、口径食の影響も無くなるので画質も良くなるし、ピントが合う範囲も大きくなるということを説明して参りました (`・ω・´)

となると、風景写真ならシャッタースピードを度外視するならF値はひたすら大きくした方が良いとなりますが、実際には回折現象というものがあり、そうはなりません。回折というのは波が狭い隙間を通過するとき周囲に広がることを言います。

日常生活で言うと、ドアの隙間から光が多少入れば、ある程度部屋全体が明るくなったりするのもこれが原因です。

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CANON HPより引用

 

光も波の一種なのでこの影響を受けてしまうわけです。絞りすぎると直進光に対して、この回折光の割合が大きくなります。なので「小絞りボケ」とも言いますね。

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ということで、いたずらに絞りすぎるのも考え物というわけです (`・ω・´)

 

 

~まとめです~

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絞ることでレンズ周辺の光をカットして上質な中央を使用することができ、口径食の影響も減少するので、画質が向上します。また、被写界深度も深くなります。ただし、あまりにも絞りすぎると回折現象が目立ち画質低下につながります。なので、F8付近は多くのレンズにとって風景写真を撮影するのに適したF値だと考えます

実際にレンズの解像度の一例を提示します。F8付近が解像度のピークになっています。

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https://www.ephotozine.com/article/zeiss-batis-40mm-f-2-cf-review-32824/performance

 

 

~おまけ:時と場合によります~

とはいえ、適切なF値というのはケースバイケースです。無難なのは解像力も高く回析の影響も受けにくいF8付近だと思います。しかし、手前の被写体にピントを合わせて、遠景もしっかりと映したい場合もあり、そういう時は躊躇せずF16~F22を選択します。例えばこの写真はF16まで絞っていますが、そういう意図があってです。

DSC_0786ooのコピー

また、意図的に背景をボカしたい場合や、F値が大きくなり光条が大きくなることを避けたい場合には風景写真であっても敢えてF2.8程度で撮影したりします。この写真はそういう意図でF2.2で月とベンチを撮影しました。

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結局のところ、自分の撮影意図にあったF値を選択するのが最善という事であります ^^ 

 

 

~おわりに~

ということで今回は、「F値が大きい方が画質が改善する」「F値が大きい方が被写界深度が深くなる」という非常に一般的なことを理屈的に解説してみました。

もっともこんな理屈を知らなくても写真は撮れます。某5才児に叱られる可能性がちょっと減るくらいの効能しかないかもしれませんが、風景写真の撮影に際してF値の決定の参考になってくれたら幸いです。

最後になりましたが、私が勘違いしていることやご質問がございましたらコメント欄にお願いします。

それではまた次回、お会いしましょう m(_ _)m

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 <P.S.>

ブクマコメントでxevra様が御指摘下さったのですが、回折の説明が間違っていたので訂正しておきました。絞ると回折光が多くなるのではなく直進光に対する割合が大きくなるのですよね。失礼しました m(_ _)m

 

 

~関連リンク~

F値を大きくするとピントが合う部分が広くなることを被写界深度が深くなると言います。では実際に被写界深度の深さって計算することができるのでしょうか?そういうことを解説した記事です。

口径食は周辺減光という事象に大きく関連します。これについて解説した記事です。