こんにちは、Circulation - Cameraです。
みなさん、今日もシャッター切っていますか!?
今回はカメラがカメラである以上、切っては切れない関係のシャッターに関する内容にしてみました^^b
唐突ですが、カメラのシャッターは機械式と電子式に大別することができるということをご存知でしょうか?
機械式シャッターとは物理的に撮像素子やフィルムに当たる光の量を調整するタイプのシャッターを指します。人間の眼で言えば瞼 (まぶた) のような存在ですね。フォーカルプレーンシャッターやレンズシャッターが代表的です。
それに対して電子シャッターは撮像素子そのものが指定された時間だけ光情報を記録するという方法論を指します。語弊はあるかもしれませんが、撮像素子そのものが有するシャッター機能です。
機械式シャッターに対してメリットは多いのですが、まだまだ発展途上の技術で、逆に言えば、これからを大変注目されている分野でもあります。もしかしたら電子シャッターに関連した下のような用語を聞いたことあるかもしれません。
・静音シャッター
・電子先幕シャッター
・グローバルシャッター
いずれも電子シャッターに関する用語なのですが、意外とはっきりとは知らない方も多いのではないかと思い、今回は電子シャッターのメリットや課題についてまとめてみました!
ちょっとマニアックでしかも長めの記事になってしまいましたが、割とホットな話題ですので、興味のある方は時間のある時に読んでやって下さいませ💦
それではよろしくお願いします m(_ _)m
~電子式シャッターの利点~
早速ですが電子シャッターのメリットについて考えてみましょう。物理的なシャッター機構が省略できるのでカメラの小型化に貢献しますよね。また、物理的にシャッターが開閉しませんので、無振動で機構ブレを抑えて撮れます。そして静かです (なので静音モードと表現する機種もあります)。
また、シャッターの先幕後幕が物理的に上下するわけではありませんので、一眼レフのフラッグシップ機を超えるような超高速連射が可能だったり、1/32000秒などの超高速シャッタースピードを可能にします。
これはLeica Qというカメラのスペックですが、電子式シャッターを稼働させれば1/16000 secという超高速撮影が可能であることが分かります。
ちなみにスマートフォンのシャッターはこの電子シャッターですよ💡
~機械式シャッター、要らないのでは?~
「え??ちょっと待って…。小型化できて機構ブレがなくて静かで連射性も良い?そんなに良いことだらけなら全部電子式でいいじゃん?」
誰もがそう思いますよね ^^;
しかし、2019年3月現在、電子式シャッターが可能なミラーレス機や一眼レフ機であっても、機械式シャッターはほとんどのカメラに採用されています。
これは電子式シャッターには、今はまだ欠点があるからなのです。
~電子式シャッターの欠点~
こちらの写真をご覧ください。
これは揺らした自分の部屋の蛍光灯の紐を電子シャッター撮影した写真です。紐がぐにゃりと曲がって、しかも変な筋が写り込んでいます。
ちなみに下の写真は機械式シャッターで撮影した写真です。
これは何故なのでしょうか!?
【解説】
まず、CMOSセンサーは端から順々の露光読み取りをしています。これをローリングシャッター方式といいます。
高速シャッター時のフォーカルプレーンシャッターの後幕・先幕の間のスリットが移動する挙動に少し似ていますよね。参考までにフォーカルプレーンシャッターの模式図も載せておきます。
しかし、電子シャッターとフォーカルプレーンシャッターで大きく違うのは、スキャンする速度です。スキャン速度がフォーカルプレーンシャッターの幕速に比べてかなり遅いのです。公称値は無いのですが、フォーカルプレーンシャッターの場合は1/200~1/300 secかけてスリットが動くとされています。一方、現在のほとんどの電子シャッターは上から下まで読み込むのに1/50 sec程度はかかるといいます。下に図示しますね。
で、この上から下までの読み込みにかかる時間が先ほど紹介したこの写真のような「歪み」の原因になるのです。
つまり、動いている被写体を撮影すると上から順々に読み込みを行うので、被写体が歪んでしまうわけです。これをローリングシャッター歪みと言います。
イメージできますか?以下に図で説明してみましたのでご参照ください m(_ _)m
~あの縞模様は何?~
これに加えて、CMOSセンサーの上から下まで読み込むのに時間がかかるということはフリッカーの影響を受けやすくなります。蛍光灯やLEDは、1/100~1/120 sec毎にチカチカと点灯していますので、上から下まで読み込んでいる間に何周期かチカチカしてしまい、それを拾ってしまうのです。
※ちなみに各ラインが1/100~1/120 secよりも長い時間光情報を記録すれば、この影響は受けません。
~電子シャッターのまとめ~
電子式シャッターは小型化・振動が発生しない・連射性や高速シャッターが可能という利点があります。しかし、 ローリング歪みとフリッカー縞模様は今後解決しなくてはいけない問題点だといえます。
これらの問題は、もし電子シャッターで上から下まで読み込む速さが、フォーカルプレーン方式と同じ1/200~1/300 secまで上がれば解決します (少なくとも目立たなくなります)。
ちなみにSONYのα9はローリングシャッター歪みが起こりにくいように読み込み速度を高めている機種として有名です。しかし、多くの機種ではそこまで高速読み取りは2019年3月現在では難しく、電子シャッターを搭載したレンズ交換式カメラであってもフォーカルプレーンシャッターを採用しているのです。
~電子先幕シャッター~
さて、少し話が変わります。今度は電子先幕シャッターについてです。多くの機種に採用されているモードですよね ^^
さて、ミラーレス機の場合、EVFや背面液晶を覗いているときは当然シャッターは開放状態です。なのでミラーレス機でフォーカルプレーンシャッターを使用する場合は、シャッターボタンを押すと、先幕が降りて、次に後幕が降りてきて露光が終了します。こうなると、先幕が降りたときにどうしてもブレが発生します。
一時期、一眼レフ機に比べてミラーレス機の方が機械式シャッターによるブレが多いと話題になったと思いますが、あれはこういう理由です。この打開策として、先幕だけを電子化したものが「電子先幕シャッター (electronic front curtain shutter)」です。
言葉で説明すると、
① シャッターボタンを押す
② 撮像素子上の情報がリセットされる
(光を記録していない状態 (上図左))
③ 後幕が降りてくる速さに合わせて順次記録
(≒ 電荷蓄積動作開始 (上図中央・右))
こうすることで後幕と電子先幕の間に架空のスリットができて、あたかもフォーカルプレーンシャッターのような挙動ができます。
④ 後幕が降りきったら読み込み開始
分かりにくいでしょうか💦
もう一枚、説明画像を描いてみました ^^;
この電子先幕シャッターの利点は大きく3つ挙げられます。
① メカ先幕が移動することで生じる機構ブレがなくなる
(なのでこれを低振動モードと表現する機種もあります)
② シャッターボタンを押してから先幕が下がるまでの時間が省略できる
(= レリーズタイムラグの短縮)
③ ローリング歪みが気にならない
~電子先幕シャッターの欠点~
ただし、この電子先幕シャッターには欠点があります。それは高速シャッターの場合、露光ムラが発生したりとボケが欠けてしまうことです。
自分でD810・D850・Z6で実験したときにはうまく露光ムラが出せず、サンプルがなくて恐縮なのですが、インターネットで「電子先幕シャッター 露光ムラ」や「電子先幕シャッター ボケ」で検索すると、サンプルが簡単に見られますので、気になる方は検索してみて下さい m(_ _)m
<example>
https://phillipreeve.net/blog/limitations-of-the-electronic-shutter-function/
実際にどんな感じになるかというと、イメージ的には以下のように、低速シャッターで撮影したときには均一に露光されるのに、高速シャッターにすると不均一な露光になります (多くの検証では1/2000 sec以上のシャッター速度で目立つとされています)。
これは後幕と撮像素子の間の微妙な空間 (5mm程度) が陰になることが原因とされています。フォーカルプレーンシャッターでは先幕後幕両方とも同じような平面に幕があるのですが、電子先幕の場合は違いますよね。
理屈的には以下のような場合に影響が大きくなります。
- 電子先幕と後幕の間隙が小さい場合 (≒ SSが早い場合)
- 大口径レンズで絞り開放の場合
ただ、私自身もこの理屈を完璧に理解しきっているわけではありませんし、私の説明力では凄まじく長い説明になってしまいます💦
しかも、理屈の詳細を知っていても知らなくても実際の撮影上問題ないので割愛させて頂きます (どうしてもという方がいれば、頑張ってコメント欄に書いてみますので教えて下さい m(_ _)m)。
~電子先幕シャッターのまとめ~
ミラーレスカメラではシャッターボタンを押すと先幕が移動することで機構ブレが発生してしまいます。なので先幕を電子化する電子先幕シャッターというシャッター機構が多くの機種に搭載されています。
有効な機能なのですが、欠点として、高速シャッターで露光ムラやボケの一部が欠けてしまうケースがあり、注意が必要です。
~電子先幕シャッターの補足~
(1) 先述したように多くの検証で1/2000 secよりも速いシャッタースピードで発生するようです。なので、シャッタースピードが1/250~1/500 secを超えると自動的にフォーカルプレーンシャッターに切り替わる機種もあります (Olympusなど)。
(2) NIKONのカメラは電子先幕シャッター時の最高シャッタースピードは1/2000 secに制限されてしまいますが、おそらく露光ムラ対策なのでしょう。
(3) レンズ情報を本体が読み取り可能で、同期可能な組み合わせ (要するに一部のカメラと純正レンズの組み合わせ) では露光ムラやボケの欠損は起こりにくくなります。
~グローバルシャッターとは?~
グローバルシャッターはCMOSセンサーの同時露光を可能とする技術です。これが可能になれば機械式シャッターや現在の電子シャッターのもつデメリットは基本的に全て解決することになります。
機械式シャッターによる機構ブレもなく、静かで、小型化できて、ストロボ同調も問題なく、高速シャッターが可能で、連射性能も高く、ローリング歪みもなく、電子先幕シャッターで、理論上は問題になる露光ムラやボケの欠如もありません。
ある意味、シャッターの最終形態と言えるかもしれませんね!市販のデジカメレベルで実用化されるようになるのはいつかは分かりませんが、大変興味深い技術です ^^b
※余談ですが、CCDセンサーはCMOSセンサーと違ってデフォルトでグローバルシャッター可能です。ただ、歴史的にCCDは逆光条件でスミアというアーチファクトが出やすく、CMOSの方が安価である点や消費電力が少ない点などが評価され、CMOSセンサーが現在のレンズ交換式カメラ撮像素子の主流になっています。
~今回のまとめ!~
・機械式シャッターと違い、電子シャッターは小型化可能で、機構ブレを低減でき、高速シャッターが可能、連射で有利という利点があります。
・しかし、現在のCMOSセンサーはラインごとに読み込みを行うので、純粋な電子シャッターの場合、動態撮影時の「歪み」やフリッカーによる縞模様の出現が問題になります。そのため、今でも機械式シャッターは多くの機種に並行採用されています。
・ミラーレス機は先幕の移動するショックが問題視されますが、先幕だけを電子シャッターにすることで対応できます。
・そんな電子先幕シャッターは画期的なシステムですが、高速シャッターでの露光ムラなどが問題になりえます。
・仮にCMOSセンサー全体を同時にすべて読み込むことができれば、ある意味理想的であり、これをグローバルシャッターと呼び、市販のデジタルカメラレベルでの実現が待たれるところです。
※2019年3月18日追記:
そんなことを書いていたら早速、デジカメインフォにグローバルシャッターに関する話題が!楽しみですね ^^b
ソニーが裏面照射型のグローバルシャッター搭載積層型CMOSセンサーの技術を開発 - デジカメinfo
~おわりに~
ということで今回は電子シャッターについてまとめてみました。電子シャッターはまだまだ課題のある技術です。しかし、それだけに今後の改善に期待される分野でもあり、今後耳にする機会は増えるのではないかと思います ^^
そんな時、もしこの記事がどなたかの参考になってくれれば嬉しいです♫
最後になりますが、私が勘違いしている点やご質問がございましたらコメント欄にお願いします m(_ _)m
それではまた次回、お会いしましょう (`・ω・´)b
~関連リンク~
ここまで書いておいて「今更!?」て感じですが、機械式シャッターの仕組みをまとめた時の話です ^^;
高速シャッターと言えば動物撮影!?この日はそんなに高速シャッターのお世話になりませんでしたが、たまに動物など動きものも撮っている身としては、電子先幕シャッターや静音シャッターについて知っていることは大事なことです ( ̄▽ ̄)