こんにちは、Circulation - Cameraです。今回は手振れ補正という機能について考察してみたいと思います。手振れ補正は今や多くのカメラやレンズに実装されている機能です。ブレてキレのない写真はかなり残念な感じになります。
例えば上の写真、一見問題なさそうですが、拡大するとこんな感じにブレています。典型的な手振れ写真ですね。
これをカメラ側が抑制してくれるというのはありがたい話でございます。でも、実はあまり必要のない場面が多かったり、その真価を発揮できていない場面も少なくありません。ということで今回のテーマは「手振れ補正」です。
手ぶれ補正をオンにしていても役に立っていない場面もたくさんあるのです。ちょっと長い記事になりますが、興味のある方はよろしければ時間のある時に読んでやってくださいませ。それではよろしくお願いします m(_ _)m
~レンズ内 or ボディ内補正~
まず、手振れ補正には大きく2通りの補正方法があります。
・レンズ内に手振れ補正
・ボディ内に手振れ補正
それぞれの特徴を見ていきましょう。
(1) レンズ内補正
レンズの中にあるジャイロセンサーがブレの方向と量を検知し、レンズ内の補正用のレンズが動くことで補正効果が発揮されます。絵で説明するとこんな感じです。
レンズ内補正はファインダーで補正効果を確認することができます。これは結構重要で望遠レンズで構図を作るときなどに重宝します。
手振れ補正は全てのレンズに搭載されているわけでは無いです。NIKONならVRと表記されたレンズ、CANONならISと表記されたレンズにのみ搭載されています。レンズはその分、重くなるし高価になるというデメリットがあります。
(2) ボディ内補正
ボディ内手ブレ補正ではボディ内ジャイロセンサーがブレを検知し、イメージセンサーが動くことで補正が行われます。ブレと反対方向にイメージセンサーが動き、ブレを打ち消すイメージです。レンズ内手振れ補正の効かないレンズでも手振れ補正が効くのは魅力的ですよね。ただし、一眼レフ機の場合はファインダーで補正効果が判断できないのが欠点です。
※ミラーレス機のEVFなら補正効果が得られます (2023年2月追記)
~手振れとシャッタースピード~
さて、ここからが大事なお話です。そもそも手振れはどんな時に起こりやすいか。それはシャッタースピード (以下、SS) が大きく関係します。古典的には「1/焦点距離」より遅いと手振れしやすいと言われています。例えば50mmのレンズなら1/50 secより遅いと手振れしやすいということです。
例えばこの写真は24mmで撮影していますから理屈的には1/25 secあたりが手ブレするかどうかの境目になります。実際のところ、この写真は1/80 secで撮影していますので手ブレはとても起こりにくいということになります。手振れ補正機能は不要な状況といえるでしょう。
※ただこれはあくまで基準です。カメラの構え方やレンズの焦点距離や被写体との距離などによって変化しますのでご注意ください。
~被写体ブレには無力!~
これが一番重要なポイントです。現実の被写体というのは動くものが結構多いです。ポートレート撮影、スポーツ撮影、生き物撮影はもちろんのこと、風景だって花や木は風で結構動きます。これらをピタリと止めることがスチル撮影では肝になってきます。意図してやっている場合を除いて、被写体ブレしている写真は格好良くありません。
NIKON Z 9 + NIKKOR Z 70-200mm F/2.8 S VR, ISO 200, F 2.8, SS 1/1250 sec
こんな風にピタッと動きを止めることが丁寧な写真の条件といえます。手振れと違って必要とされるSSに基準はありません。被写体の種類や焦点距離によってかなり違ってくるので経験がある程度必要になります。
例えばこの場面はSS 1/1000 secで撮影しています。花びらも水面もピタリと止まっていますね。もしこれがSS 1/100 secなら確実に被写体ブレしていると思います。
(`・ω・´) < 手振れ補正はほぼ意味のない世界
~ポイント!~
つまり、被写体ブレをしないようなSSで撮影することは自然と手振れしないSSになっていることが多いのです。
(`・ω・´) < ここ大事!
そう考えると実は手振れ補正が重要な場面って案外と少なかったりします。逆に初心者の方は被写体ブレがすべてを台無しにする可能性を知る必要があります。手振れ補正はあくまで手振れ補正!手振れ補正がついているから「夜景も安心」とか「暗いところでも安心」と書かれている機種、多いですが、全然安心ではありません ^^;
Z 6Ⅱ + NIKKOR Z 50mm F/1.2 S VR, ISO 2500, F 1.2, SS 1/200 sec
この写真も被写体ブレをさせないためにSS 1/200 secで撮影しています。手振れ補正を信じてSS 1/10 secとかそんなので撮影していたら絶対残念な結果になっていますよね?手振れ補正を妄信してはいけないのです。
~手振れ補正が有効な場合~
では手振れ補正が有効に働く場面はどんな場面でしょう?
(1) 暗い環境で静止物を撮るとき
これが一番多いでしょうか。室内とかは想像以上に暗いです。人間は瞳が自然と開いてしまうので実感できないですけどね。あとは単純に夕方とか夜とかですね。
この写真は28mmの単焦点レンズで撮影していますがSS 1/6 secで撮影しても全く手振れが発生していません。手振れ補正の恩恵ですね。
(2) 望遠レンズを使用するとき
焦点距離200mm以上のいわゆる超望遠レンズを使用する場合、手振れの影響がかなり大きくなります。特にレンズ内手振れ補正があると構図を追い込むのにも助かります。
Z9 + AF-S NIKKOR 200-500mm F5.6E ED VR (350mm), ISO 400, F 8.0, SS 1/400 sec
Z 6 + NIKKOR Z 70-200mm F/2.8 S VR (200mm), ISO 100, F 2.8, SS 1/100 sec
(3) 敢えてスローシャッターを使いたいとき
敢えて被写体ブレを活かして動きを表現したい場合には手振れ補正は助かります。
とはいえ、本気で5秒以上のようなロングシャッターが必要な場合はやはり三脚が必要ですけどね。
~手振れ補正を切った方が良い場合~
本日の話のポイントは「被写体ブレを防ぐためにはある程度SSが速い必要があるので手振れ補正は必要がない場面は結構多い」です。
ただ、手振れ補正をonにしたから画質悪くなったと実感したことは個人的にはないです。なので意味があるかどうかは置いておいて、基本的に手振れ補正はonのままで良いと思っています。ただし、三脚固定撮影だけは別!このときはoffにしておかないと誤作動して逆にブレブレの写真になることがあります。
この時はそういう感じでした。三脚にNIKON Z 6とNIKKOR Z 14-30mm F/4を載せて撮影するとどういうわけか解像感の無い写真ばかり。「あっ!」って思って確認したところZ 6のボディ内手振れ補正がonになっていたんです。気づいて良かった💦
※ボディやレンズに三脚使用時にoffしなくていいよ、と書かれている場合もあります。もっとも、個人的にはそうであっても癖でoffしちゃいますけどね ^^;
~おわりに~
今自分が向き合っている被写体に適したSSを常に考えておく必要があります。そうすると案外手振れ補正が有効な場面が多くないことに気づくと思います。もちろん、三脚にのっけて撮影するとき以外はonになっていて困ることは特にないのですが、初心者の方で「手振れ補正 = 写真がブレにくい」と思っている方は多いので一回記事にまとめてみました。
しつこいですが被写体ブレをしないSSをしっかり考えましょう。手振れ補正を妄信してブレた花の写真やお子さんやペットの写真を量産しないようにご注意あれ!それでは今回はここで失礼します m(_ _)m
~おまけ①:手振れ補正表現~
このように「X段の補正」と表現されます。3段よりも4段、4段よりも5段の方が強力な手振れ補正ということになります。このX段というのは「本来なら手振れしてしまうより2のX乗遅いSSでも手振れしません」という意味です。分かりにくいですね。でも具体例を1回見てもらえたら別に難しいことないと思います。
例えば80mmのレンズを引き合いに出しましょう。古典的には1/80 secくらいなら手振れしにくいということでしたよね。これに対して、例えば3段の手振れ補正なら1/80 × 2×2×2 = 1/10 secくらいまでなら手振れしにくいですよってことです。
もう1例。200mmのレンズで5段分ならどうですか?1/200 secくらいから手振れするかもしれませんが、1/200 × (2×2×2×2×2) ≒ 1/6 secくらいまで手振れしにくいということになります。
~おまけ②:5軸補正とは?~
これもわりと良く聞く言葉ですね。5軸というのは
・①② 前後+左右に傾く (= 角度ブレ)
・③④ 前後+上下の平行移動 (= シフトブレ)
・⑤ 左右に回転するブレ
以上5方向のブレをすべて検出して対応できるという意味です。下のSONYさんのHPから引用した画像が分かりやすいと思います。
かつてはボディ内手振れ補正と言えば2軸でしたが、現在は5軸補正をできるボディが多いですよね。ちなみに通り回転ブレ (上の図で言う⑤) にはレンズ内補正は無力です。
~関連リンク~
「X段補正」の「段」について語った記事です。