Circulation - Camera

巡る季節を写真に残す! ~Since 2017-05-01~

【久々に医療のお話】どうしてコロナ感染症の着地点が見えてこないのか

こんにちは、Circulation - Cameraです。いわゆる第7波に入ってコロナ感染者数がこれまでになく増加していますね。結果的にいろんな情報が錯綜していて混乱が発生しているように思います。普段はカメラや写真のことばかり載せている当ブログですが、職業は内科医で必然的にコロナ診療に携わる立場ですから、少なくとも医療現場には人並以上に詳しいと自負しています。今回はちょっとだけカメラの話ではなくて、「なぜ未だにコロナ対策の落としどころが見えないのか」に関して文字に起こしてみたいと思います。あくまで自分の考えですが、もし興味がございましたら読んでいってやって下さいませ m(_ _)m

 

~医療が逼迫する理由~

2020年に本格的にCOVID-19感染症が広まり2年以上が経過します。「なんで2年も経って病院が安定した受け入れ態勢を作れないのか」って誰もが思うことでしょう。これの大きな理由はスタッフや患者さんの感染による病棟閉鎖だと思っています。複数の病棟のある総合病院や救急病院をイメージして下さい。ここのある病棟で同時に複数人の感染が確認されたとします。するとこの病棟は新しい患者を受け入れにくくなります (この状態でまだドシドシと入院させる病院はほぼ無いと認識しています)。すると本来そこに入るはずだった患者さんたちは他の病棟に入ることになります。急性期病院というのはベッド稼働率90%とか当たり前の世界なのでもともと余力はありません。しかも本来その病棟に入る予定でない疾患を抱えた方が入院するのはスタッフ的には結構きついです。ちょっと極端な例を出せば脳梗塞症例を整形外科病棟で診るみたいな感じ。こうなってくると新規入院は抑制せざるを得なくなります。

まして今のオミクロン株はデルタ株 (2021年夏に猛威をふるった変異株) までと比べて感染力が強く、最近は毎日都内だけで2万人の感染は当たり前。そうなると患者さんの絶対数は増加し発熱者外来や救急需要は逆に高まり、医療逼迫に至るという構図です。

 

~コロナはただの風邪?~

「そもそもコロナにそんなに特別なの?」「ただの風邪なんじゃないの?」というご意見もございます。まず、デルタ株に比べてオミクロン株が重症化しにくいのは間違いないです。自分は発熱者外来を担当することもありますがデルタ株までの時は本当に大変でした。肺炎患者さんが多くて多くて。でも入院させたくてもどの病院も満床又は機能不全。正直二度とやりたくないです。一方でオミクロン株は入院が必要な肺炎に至るケースは明らかに減少しています。

引用:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000975398.pdf

こちらは広島県が公開しているデータです。オミクロン株に置き換わった第6波以降の中等症Ⅱ以上 (酸素投与が必要な状態) に至るケースは減少しています。重傷者の推移を見ていただいても同様の印象を受けるでしょう。

しかし、病院や高齢者施設という特殊な環境の場合、少し話は変わってきます。免疫力の低い方や体力の無い方が非常に多い環境。もちろん2022年1月以降、コロナ肺炎で重症化するケースは減っています。どちらかというと基礎疾患 (心不全や腎不全や慢性肺疾患など) が悪化したり、高齢でもともとギリギリであったADLや認知機能が低下して転帰を悪化させる方が目立ちます。つまり、重症者としてカウントされる数は減少しても、そこには表れないところで医療者や患者さん及びその家族を圧迫しているのが最近のコロナ感染症のいやらしいところだと思っています。

 

~5類に落としたら?~

逆に言えば、このオミクロン株は高齢者や基礎疾患のない方に関してはそれほど重症化することは少なです。そういう意味で自分としては2類相当から除外することは賛成です。重症化しない代わりに感染力が非常に強い特徴のある変異種です。なので全数把握は外来と保健所の大きな負担になってしまいます。ただ、それだけでこの問題は解決しないのはお判り下さいますでしょうか?コロナはまだそこら中に蔓延していることには変わりないのですから。

 

~まとめ~

ということで今回はどうしてコロナ感染症の終わりが見えてこないのかに関して自分なりの意見を述べてみました。要点を言えば、「コロナが蔓延すると院内でも感染が発生しやすくなる。するとハイリスクな方を守るためにブレーキがかかり入院を抑制する。そうなると増えてきた患者さんを受け入れきれなくて医療逼迫する。」ということです。

残念ながらながらタイトルにあるように自分もこれに関して明確な答えはありません。2020年から2年以上、多くの識者が文字通り寝る間も惜しんで対策を考えてきたのでしょうが、解決策が提示できないでいるのが現実です。

とは言え、入院患者さんでたまたま陽性だった方や院内で感染してしまった方も診ている身としては思うところがない訳ではありません。オミクロンの特性+治療薬も一応ある+ワクチンも普及しているといったことが相まって苦戦するケースはデルタ以前よりは明らかに減りました。なので、なるべく病棟は閉鎖せず救急の受け入れ制限が今よりも減ってくれたらいいなと思ったりしています。

ちなみに、なんでも自粛の世界はよほどのことが無ければ不要と思います。自分も気をつけつついろんなとこ行ってますからね。ただ、これだけ感染症が蔓延している今、誰もが感染するリスクがあります。いざ感染するとと症状が強い方もおられるでしょう。不安な気持ちもわかります。ただ、焦ってもしょうがないので冷静に近くの医療機関や医療関係者に相談してみて下さい。

子供連れて海に行ったり

ひまわり見に行ったり!

ということで、今回は久々に医療系の話をしてしまいましたが、次回から元の写真カメラのブログに戻ろうと思いますので、またよかったら遊びに来て下さいませ〜 m(_ _)m

もしご質問などございましたら答えられる範囲でお答えしますのでコメント欄にお願いいたします。

 

〜おまけ:ちょっとした情報〜

最後にちょっとだけこんなこと知っていたら役に立つかも?情報です。

・潜伏期間 (ウィルスに感染してから発症するまでの時間) はデルタまでよりは短くなっており3-5日の方が多い。

・高齢者ほど発熱しにくく小児ほど発熱しやすい傾向にある。

・有症状で感染が確認された場合、10日程度の自宅待機+症状改善後3日以上したら隔離解除となります。その際にPCR検査の陰性証明は不要。仮にPCR検査して陽性でも医学的に感染性はないと判断されるはずです。

・感染経路は接触感染もありますがほとんどは経気道感染。特に飛沫感染が多いのはこれまでと変わらない。