こんにちは、Circulation - Cameraです。レンズを褒める表現として「神レンズ」という言葉がありますよね?個人的にはあの呼び方はあまり好きではありません。これといった定義もないですし、結構軽々しくと使われているように思うんですよね。
とはいえ、自分が使用しているレンズで「これは良いレンズだなぁ」と何度も感じさせてくれたものもあります。それらが神かどうかは分かりませんけどね。中でも今回レビューする、NIKKOR Z 14-30mm F4/Sは発売日から約3年間使ってきましたが、誰にでもお勧めできる非常に汎用性が高いレンズだと思います。
まぁ、なんぼ誰にでもお勧めできるとはいえ、Zレンズに興味がないと意味のない記事かもしれないのですが、NIKONにはこんなレンズがあるんだなぁってくらいの気持ちで読んでいただければ ^^;
それでは、よろしくお願いします m(_ _)m
~利点①:扱いやすい画角~
このレンズのカバーする焦点距離は読んで字のごとしで14mmから30mmなんですが、これが大変使いやすいのです。25-30mmで撮影した画角は人間の視界に近いため汎用性に優れます。世界で一番売れているカメラであろうスマホカメラに標準搭載されているレンズがだいたいこの画角ですと言えば分かりやすいでしょう。
一方、14mm~20mmあたりのいわゆる超広角は日常的にそんなにバシバシ使うわけではないかもしれません。でもふとした時に欲しくなる画角なんですね。これは自分だけでなく多くの方に当てはまることだと思います。実際にそういったニーズに答えて、最近のスマホは14mmくらいの広角レンズもついていたりします。
したがって14mmから30mmまで連続性にズームできるこのレンズは大変使いやすいです。画質に関しては後にお話ししますが、解放から何の問題もなく使用できます。
~利点②:扱いやすいサイズ感~
軽くてAFが素早いので誰でも快適に使えるでしょう。重さはたったの485gです。なぜこんなにコンパクトなのに十分な描写力を出せるのか?秘密はデジタル補正にあります。単純な光学系としてはかなり湾曲の強い画像になってしまうのですが、カメラの中で自動補正をかけて周辺の流れや画面の湾曲を解消してくれるという寸法です。こうすることで小型軽量化が実現できたわけです。
※補足:
なのでマウントアダプターとかで他社のボディに装着するとダメかもしれませんがZマウントは現在のメジャーなマウントで最もフランジバックが短いので、その心配はいらないかと思います。
~利点③:解像度も結構良い~
各焦点距離のラボテスト結果を張っていきます (引用:ephotozine review page)。
3500 LW/PHを超えるとだいたいexcelent~outstandingと評価されますので、その位置に赤線を引いてみます。
望遠端でedgeの解像度が悪くなっていますね。それ以外は概ねF4~F11の範囲では十分な解像度を記録していると思います。また、同レビューで倍率色収差は、中央でも隅でも概ね0.5ピクセルを下回っており、色ズレの兆候は見られないとされています。実際このレンズを使用していて偽色に悩まされたことはありません。あと、周辺の歪みや流れも比較的少ないです。
下の写真は17.5mmの作例です。
こちらは15.5㎜での作例です。
「デジタル補正ってどうなん?」と思われる方もいるかもしれませんが、焦点距離を考慮すると全く問題ないように思います。いずれもZ6での撮影結果ですが画質も良好だなと思っています。
~利点④:フィルター交換が楽~
下の写真はC-PL filterを装着して14mmで撮影したものです。
フィルターが使いやすい。これがこのレンズの最高の特徴の1つだと思っています。φ82mmの円形フィルターが使用できます。
注意点は1枚ならケラレも発生しないですが、2枚重ねすると14mmの広角端では発生するといったところでしょうか。
下はND filterを装着して14mmで撮影した写真。ND filterが日中でも30秒間露光可能にしています。このとき、海には結構サーファーがいましたが長時間露光効果で消えています。
~利点⑤:光芒が綺麗~
もう1つ、このレンズの大きなアドバンテージはこれです。強い光源に向けてF16くらいまで絞るとほぼ確実に美しい光芒が見られます。
※この方法で撮影するときは必ずあらゆるフィルターを外してくださいね。でも、先にお話しした通りフィルターの着脱がストレスになるレンズではないので楽々です。
~ここまでのまとめ~
・14-30mmという標準レンズ的な画角とふとした瞬間に欲しくなる超広角画角をレンズ交換無しで使用できる。
・デジタル補正のため非常にコンパクトなレンズ。AFも素早い。
・解像度は望遠端で若干弱いもののズーム全域で解像力で不満感はあまり感じられない。周辺の流れもこのズーム域のレンズとしては良く補正されていると思う。
・φ82mmの円形フィルターが使用できるので交換が非常に楽。
・絞れば簡単に綺麗な光芒を出せる。
~14-24mm F2.8とは全然違う!~
NIKONにはFマウントとZマウントにそれぞれ14-24mm F2.8のいわゆる大三元レンズがあります。正直に言って、14-30mm F4は大三元レンズよりも「買い」だと思っています。
少なくともFマウントの14-24mm F2.8は出目金レンズですからフィルター類が使用しにくくどうしたってストレスフルです。それでいて970gと重い。Zマウント版の14-24mm F2.8は650gと軽量化され出目金ではなくなり画質も良くなりましたが、フィルター径112mmという異色のサイズ感です。ではZマウント版の14-24mmと今回称賛している14-30mmとで画質に違いがあるのかというと、実際に両者使った感じそこまで極端な差は感じません。解像度テスト的にもそんな感じだと思います。
下はePhotozineから引用したグラフです。14-30mm F4と比べやすくするように14-24mmはF2.8の部分以外だけを赤線で囲っています。
解像度は14-30mm F4は広角端>望遠端、14-24mm F2.8は広角端<望遠端なのはちょっと興味深いですね。でもどちらも優秀でしょう?なので、自分はどちらも所有していますが、実際のところ14-30mm F4で充分間に合ってしまうなと思います。14-24mm F2.8は星を撮影するのにF2.8が必要だったので買っただけであり、アルターネイティブなより星撮影に適したレンズが発売されたら14-24mm F2.8は手放してしまうのではないかと思っています。
そんな大三元すら食ってしまう14-30mm F4の欠点はなんでしょうか?
~問題点①:F4は暗い?~
F4解放から全然使えます。それは違いない。
ただ、星撮影や本格的な夜撮影では多少は不利なのは否めません。個人的にはそれがあって14-24mm F2.8と購入しましたのでね。
~問題点②:見た目?~
発売当初、「ダサい」、「高級感がない」、「購買意欲が刺激されない」という意見がまぁまぁ耳に入ってきました。たしかにそっけないデザインですかね。小型で軽量で扱いやすいんですけどねぇ。
~問題点?:動画は分からない~
自分はスチル中心なので動画撮影に対してどうかはちょっと評価できません。
~総評~
でもこんなもんです、3年近く使用して感じた欠点って。本当に隙の無いというか誰にでも受け入れられるレンズだと思います。値段も約15万円とフルサイズのS-lineレンズとしては決してバカ高いわけではないです。正直、このレンズのためだけにZマウントを使用してもいいんじゃないかなというくらい優れたレンズだと思っています。
~おわりに、NIKON頑張れよ~
ということでNIKKOR Z 14-30mm F4/Sの長期使用レビューでした。Zレンズには本当に良いレンズが多いと思います。でもZレンズって全然普及していないんですよね。。。
最近のデジカメinfoさんで最近紹介されていた記事を見ていてもそんな印象です。
交換レンズの販売本数シェアはマウント別ではEマウントがダントツ、メーカー別でキヤノンがやや優勢 - デジカメinfo
「BCN AWARD 2022」ではレンズ一体型部門・一眼レフ部門はキヤノンが1位、ミラーレス部門はソニーが1位 - デジカメinfo
なぜNIKONがこんなにシェアを落としているのか。個人的には最初のカメラZ6とZ7がスペック的に時代遅れ感が否めなかったこと、その後発売されたZ6ⅡZ7Ⅱが思った以上に進化を感じさせてくれなかったことが競争に置いて行かれている理由の1つだと思います。
使ってみたらいいカメラなんですが、良く言われるようにコマーシャルが下手だったり、そもそもフルサイズミラーレス市場に乗り出すのが遅かったことも非常にマイナスだったと思います。やっとZ9というモンスターマシーンが出たのに半導体不足で品薄ですしね。。。
この記事を書いていて改めて、「せっかくこんな良いレンズがあるのにもったいないなぁ」と思っちゃいました。良いレンズだなと思って改めてレビューしましたが、なぜか逆に切ない気持ちになってしまうという ^^;
今年も新製品をNIKONは出してくると思いますが、せめて品薄が少しでも解消するように、少しでもいい風が吹くように祈りつつ、今回は〆たいと思います m(_ _)m