~Introduction~
こんにちは、Circulation - Cameraです。今回は写真撮影テクニックのお話です。RAW現像は非常に便利なツールです。必ずしも全ての写真でRAW現像が必要なわけではないですが、これを知っているか知らないかで写真表現の自由度は大きく変わってきます。
さて、タイトルの通りですが、RAW現像を前提で撮影するときって、JPEG撮って出し前提で撮影するときと設定が異なる場合があります。例えばRAW現像前提で行くなら、現場ではこんな感じで撮り終われば良かったりします。ぱっと見では失敗写真ですよね ^^;
でもこれでOKなんです。。。なんで?
ということで、今回はこの点に注目してみたいと思います。4000字近い長い記事ですが、興味のある方は良かったら見て行ってやってください。それではよろしくお願いします m(_ _)m
~そもそもRAW現像って?~
「そもそもRAW現像って何?」という方には分かりにくい話題なので、まずはこちらをご参照下さい。
簡単に言えばカメラ任せでJPEG画像を作るのではなく、パソコンなどでJPEG画像を自分で作る作業です。
~実際にどう違うのか?~
JPEG撮って出しの場合は主題が適正露出になるように撮るものです。そのためには副題というか主題以外は白飛びしたり黒つぶれするのは仕方がないですよね?
例えば下の写真、どう考えても主題は紅葉や五重塔であり、これらが適正露出になるように撮影するべきです。結果、曇り空は白飛びしていますが、仕方のないことです。
一方、RAW現像を前提に写真を撮るときは後から調整できる明るさの幅が大きいです (これ大事!)。暗いところや明るいところは後から明るさを調整すれば良い。要は黒潰れ・白飛びをしないよう注意して撮って、露出は後で調整するという選択ができます。下の写真もせっかくの五重塔や紅葉は露出アンダーですが、そこに情報が残っていればOKなんです。
空も白飛びしていなくて地上もなんとなくディテールが残っている感じ。そしてこれを現像すればこうなります。
~調整できる幅が違うからこそ!~
先述の通り、RAWデータから現像する場合はJPEG画像を編集するよりも調整できる明るい幅が大きいからこのような撮り方ができます。理屈を簡単に説明するとデジカメで撮影すると決まった範囲の光 (≒ ダイナミックレンジ) をRAWデータとして記録してくれて、そこを逸脱したデータは残りません。
ここからカメラ内でJPEG画像を作成する場合、RAWデータでは残っていたハイライトとシャドウのデータが切られてしまいます (下図参照)。
そしてこの切られたdataは後から再生することは基本的にできません。なのでJPEG撮って出しで詳細を表現できる光の幅は比較的狭いと言えます。ですから、そんな狭い範囲の中で写真を完成させるために主題が適正露出になるように調整するのです。
もちろん、人間の「眼と脳」が認識できる光の幅 (≒ダイナミックレンジ) はもっともっと広いので肉眼では見えていたものが白飛びしたり黒潰れしたりしてムムムって歯がゆい思いをすることがあるわけです。
一方、RAW現像をするのなら明るいところ・暗いところのデータさえ残っていれば、そこの情報を写真に反映させることができるので、より肉眼で見たものと近いものを写真として残せるという仕組みです。
ですから、現場で必ずしも主題を適正露出にする必要はなく、暗所・明所のデータを持って帰るような撮影方法も十分に検討に値するというわけです。
~Example~
さてこれを踏まえて改めて例を挙げてみましょう。竹林でのこんなシチュエーションです。明暗差が強く、主題である竹林に露出を合わせると空が白飛びしていて青空だということはよく分かりません。
RAW現像前提で、空の青さも残したいのなら、下のように撮影してはどうでしょうか?
帰宅してからRAW現像すればこんな感じです。空の青さがちゃんと出ましたね ^^
~ミラーレス時代の露出の合わせ方のコツ!~
さて、ここでちょっとしたコツを紹介しましょう。先ほどから明るいところと暗いところ両方の情報が残るように撮影すると言っていますが、具体的にはどうすればいいでしょうか?
この疑問をグーグル先生に投げかけると、決まってヒストグラムを見ろって言われます。
グラフが右端にひっついていたら白つぶれ、左端だと黒つぶれということです。例えばこのデータはギリギリ黒潰れしていませんね。ただ、実際はこれを見なくても当たりをつけることができます。特にミラーレスカメラの場合!
答えを行ってしまうとミラーレスならファインダーを見ればいいんです。これで完全に黒くなってたり完全に白くなってたりして詳細が見えないときはだめな可能性が高いです。
これはファインダーでないとだまされます。現代人なら誰でも経験があると思いますが明るい日中にスマホの画面を見ると細かい部分って良く見えませんでしょう?
あれと同じです。だから必ずファインダーで確認してください。もちろんこれは厳密な方法ではないです。思ったよりデータが残っていたり、いざ立ち上げようとすると思っていたよりノイジーだったりすることがあります。ただ、ヒストグラムとにらめっこしながら設定するよりはずっと簡便で撮影に集中できると思います、なので、さっと写真を撮りたいときには便利な指標なので試してみてください。
~ここまでのまとめ!~
・JPEG撮って出しの場合は主題に露出を合わせて設定することが多いです。結果論として白飛びや黒つぶれが発生しても妥協するしかありません。
・RAWデータはJPEG画像よりもハイライトやシャドウに情報が残っていることが多く、現場では必ずしも適正露出に拘る必要はありません。暗所明所のデータをなるべく多く持ち帰るようなスタンスで撮影することができます。
・ミラーレス機ならファインダーを覗いてハイライトにもシャドウにも情報が残っているときには白飛びや黒潰れはしていないのでヒストグラムを見なくてもある程度は当たりを付けられます。
~もちろんこの撮り方はマストではない!~
「人間の眼+脳」はめちゃくちゃダイナミックレンジが広く、JPEG撮って出しでは表現できない明暗差をとらえてくれます。この差のため、もっと空の情報や地上の情報は肉眼ではしっかり見えていたんだけどなぁと苦い思いをしたことは誰でもあるはずです。
それに立ち向かう簡便な方法がRAW現像。RAW現像でハイライトとシャドウの情報を持ち上げることでより肉眼に近い光景を再現できるというわけです。
でもどんな場合でもこのような撮り方が推奨されるのかというとそうではありません。そういったケースを3つ記載して今日は終わりにします。
~①しゃーないときはしゃーない~
当たり前ですが、今回の方法でも被写体の明暗差がデジカメそのもののダイナミックレンジを超えているような場面では無理です。
こんな状況でも明暗差をつぶしたければhalf ND Filterを使うかHDR合成のような方法を使用するしかないと思います。
〜②そのままでいい時はそれでいい〜
別にいつだって明暗差が激しいわけではありません。JPEG撮って出しで充分な場面なら適正露出で撮影すればいいだけです。また、いかにRAW現像とはいえ、ハイライトやシャドウの情報を強引に持ち上げていることには変わりありませんからノイズが乗ってしまうことも考えなくてはいけません。主題を極力美しく撮影したい時には主題を適正露出で撮ることに集中すべきです。
そういう意味ではRAWデータがどのくらいの露出補正に耐えられるかはカメラのノイズ耐性にも寄ってきますのでお手持ちの機材の特徴を知っておく必要があります。
~③白飛び・黒潰れ上等!~
最後になりますが、いつでも明暗差をつぶすことが正義ではありません。写真表現として白飛び・黒潰れはむしろ歓迎されることだって多々あります。
下の写真は手前の岡や木を敢えてシルエットにしています。こんな写真で手前の岡や木の露出を上げてしまうのは野暮というもの。白けてしまいます。
~Take home message!~
・JPEG撮って出しの場合は主題に露出を合わせて設定することが多いです。結果論として白飛びや黒つぶれが発生しても妥協するしかありません。
・RAWデータはJPEG画像よりもハイライトやシャドウの情報が残っていることが多く、現場では適正露出に拘るよりもデータをなるべく多く持ち帰るようなスタンスで撮影するというアプローチができます。
・ファインダーを覗いてハイライトにもシャドウにも情報が残っているときには白飛びや黒潰れはしていないと考えることができます。
・ただし「明暗差を潰すこと=正義」ではありません。また、最初から適正露出で撮れるならそれに越したことはありません。
・暗所を持ち上げるときにはノイズが乗りますので、機材のノイズ耐性をある程度事前に知っておく必要があります。
~おわりに~
ということで今回はRAW現像を前提としているとき必ずしもメインの被写体を適正露出で撮ることに拘る必要はないという話でした。RAW現像は苦手意識を持っていて取り組んでいない方も多いかと思いますが、使えると写真表現の幅が広がりますし、多少の露出の調整はあとから効きますので是非挑戦してみてください ^^
ちょっと長い記事でしたが、ご参考になれば幸いです。
それでは、今回はここで失礼いたします m(_ _)m
~関連リンク~
この作例も明暗差をRAW現像で後から埋めてあげたものなのでご参考になれば!
「ちょっと内容が難しかったけど、RAW現像ってなんかいいのかも!?」という方はこちらをどうぞ!