こんにちは、Circulation - Cameraです。
今回は月を絡めた風景写真 (= 月景写真) をテーマに、ちょっと腰を据えて記事を書いてみました。
(`・ω・´) < 久々に長い記事。
イメージ的にはこんな写真です。
最後の方で手持ち撮影の方法にも触れようとは思いますが、基本的にデジカメ+三脚を使用する前提で話を進めてまいります。
5000字を超える長い記事になってしまいましたが、デジカメユーザーの方で格好良く月夜を写真に残したいという方は時間があるときに読んでやって下さいませ。
それではよろしくお願いします m(_ _)m
~本日のメニューです~
- (1) 撮影に適した気象条件
- (2) 撮影機材
- (3) カメラの設定
- (4) 明暗差という強敵!
- (5) 構図のコツ
- (6) RAW現像のコツ
- (7) 月景写真のバリエーション
- (8) おわりに
- おまけ①:手持ち撮影は?
- おまけ②:月夜に星は撮れるのか?
(1) 撮影に適した気象条件
~基本的なお話~
当たり前のことから書きますが、月が出ていないことにはお話にならないので新月期は撮影することができません。
一方、天気は完全に晴れている必要は無くて、多少曇っていてもOKです。さすがに月も出ないような厚い雲はダメですが、多少の曇りだとむしろ月傘が出てくれたり、空に雲のシルエットが浮かび上がって絵になりますよ ^^
少し曇っていてもOKというのは星撮影に比べるとハードルが低くて良いですね♪
D810 + Carl Zeiss Distagon 2.8/15mm, ISO 200, F 4, SS 30 sec
ただし、月齢によって月の明るさはかなり異なります。ですから、曇り空での月景写真を狙うのであれば満月期の方が雲を貫いて明かりが届きますので確実でしょう。
~月の高さは重要!~
月景写真を狙うにあたって意外と重要なのは月の高さです。月が南中するようなタイミングですと月の位置が高すぎて風景と一緒に写すことが難しくなります。そして月の出・月の入りの時間や方角は日によって全く異なります!
(`・ω・´) < これ重要!!
例えば、たった一週間違うだけでこれだけ月の出入りの時間も方角も異なりますので、下の例を見てやって下さい。
<① 2019年7月16日>
月の出:19時52分
月の入り:5時3分
<② 2019年7月23日>
月の出:22時40分
月の入り:10時13分
たった一週間でこれだけ変化します!
なので「あ!たまたま出かけてみたら良い月が良い景色と一緒に撮れそうじゃん!」というときは良いのですが、「今宵は月景写真を撮るぞ!」ってときは、事前に月の出・月の入りの時間/方角は調べることは必須です。こちらのページがおすすめですよ♪
(2) 撮影機材
次に機材ですが、ISO感度、F値、シャッタースピード (以下SS) の調整が利くカメラならば特別なものは必要ありません。もちろん、高感度耐性が優れているカメラの方が有利ではありますが、そうでなくては撮れないということはありませんので安心してください ^^
レンズに関してもズームレンズでも単焦点レンズでも構いません。ただ、画角に関しましては、広角・標準・望遠で言えば、初心者のうちは広角系のレンズから試した方が楽かもしれません。広角系のレンズに比べると望遠系レンズが必要となる構図はちょっと癖があって難しいんですよね。
これには2つ理由がありまして、望遠系で撮影する場合、暗いからと言ってSSを長くすると容易に月が動いてしまうというのが1つです (月も天体ですから星と同じように動きます)。もう1つは、望遠で狙う場合、月と風景の両方にピントを合わせにくいという点です。
言葉では伝わりにくいかもしれませんので例を出しましょう。下の写真はフルサイズ換算200mmの望遠レンズで撮影した写真です。ハイウェイを走る車と月を同じ構図に入れていますが、月とハイウェイ両方にピントは合わせられなかったので手前のハイウェイに合わせるという判断を必要とします。
なので、月景写真は望遠レンズを使った確固たる構図のイメージが無いのでしたら、まずは広角系レンズの方がとっつきやすいと思います。
アクセサリーとしては三脚が必要ですが、よほど大きなレンズを使うのでなければ普通のものでOKですし、雲台も自由雲台だろうが3 way typeだろうがかまいません。あとは、セルフタイマーを使うという手もありますが、リモートレリーズはあったほうが撮影テンポは良いと思います。
(3) カメラの設定
次は現地での具体的なカメラの設定、すなわSS・ISO感度・F値について考えてみます。この3つのパロメーターの中で、実はSSが結構重要なのです。月も天体だからあまり長時間露光すると流れてしまうんですよね。個人的な目安として、
・超広角レンズなら約20~30秒
・広角~標準レンズなら約10~20秒
・望遠レンズなら1秒前後
までが目安だと思っています。
次にF値ですが、日中の風景撮影とは違って、小さめにしておきましょう。F値を小さくしてSSを短くできるという効果と月の光条が出すぎないようにするという2つの効果を期待しています。絶対にダメということはないのですが、あまり光条が目立ちすぎると太陽みたいになってしまうんですよね (後でまたそんな作例もアップします)💦
ISO感度は正直あまり気にしなくて良いと思います。ISO感度よりもSSとF値の方が優先度が高いです。
具体例を提示してみます。こちらの写真をご覧ください。
~この写真の露出決定~
この写真の場合、焦点距離15mmの超広角レンズを選択しています。超広角レンズなので30秒程度露光しても月の流れはさほど気になりませんよね 。曇り空なのも月の流れが目立ちにくくしてくれます。ですが、これが1分間露光とかなら月は縦長に映ってしまったことでしょう。
最小F値は2.8のレンズなのでF2.8付近で撮影したかったのですが、F値は手前の倒木をしっかり解像させたかったのでF5まで絞っています。
あとはSS 20 sec、F 5で白飛び・黒潰れがある程度制御できそうなISO 2000を選択して撮影しました。最終的な露出決定に関しては次項で考察しますね。ここで最も言いたいことは、SSとF値をまず決めて、そこからISO感度は決定する方がイメージ通りに撮影できるということです。
<望遠レンズで設定が難しくなる理由>
ちなみに先ほどお見せしたこの写真。200mmという焦点距離で撮影するとSSは1秒くらいでないと月が盛大に被写体ブレします。この時は車の動きもある程度止めたかったので、F 7.1, SS 1/25 secを選択し、結果的にISO 10000となりました。
(4) 明暗差という強敵!
月夜の明るさというのは月齢によっても雲の有無によっても明るさが異なります。なので、星空と違って「ISO 3200, F 2.8, SS 20 secでとりあえず撮ってみてください」というように一概には言えません。現場でその都度、トライアンドエラーで露出を決める必要があります。ただ、これ自体はそれほど難しい作業ではありません。
月景写真の難易度は夜空の明るさと地上の明るさがどれだけ大きいかによって決まります!
撮影が簡単な例を挙げてみます。下の「都庁×月夜」を撮影した写真はビルに露出を合わせれば、空の様子もそれなりにディテールを損なわずに映ってくれました。ビルと空の露出差が小さいからなんですね。こういうときは簡単です。
一方、月とコラボさせたい風景が暗い場合は難易度が上がります。簡単に言ってしまえば、地上景を明るく写そうとすると空が白飛びしてしまうのです。
対策としては、以下の①~⑤の方法が挙げられます。
私は②の方法はあまり使ったことがないので、ここでは①と③と④と⑤の例を挙げてみたいと思います。
<①ハーフNDフィルターの例>
先ほどお見せした茶畑と月夜の写真もこの方法で解決させています。ハーフNDで空を覆ってあげれば割と解決しやすいので自分はよく使う手段です。
下の写真もハーフNDフィルターを使って空と地上の明暗差を埋めてあげています。
<③懐中電灯で照らしたの例>
むか~し撮影した写真なのですが、懐中電灯でボートを照らして夜空との明暗差を小さくした例です。ちなみにこの写真、F値を大きくしすぎているので光条が月の周りに目立ちますね。先ほど書いた通り、ちょっと太陽っぽい印象を与えがちなので、ご注意ください ^^;
ちょっと脱線しましたが、懐中電灯は案外便利です。下の写真はハーフNDフィルターを使いつつ、ベンチを懐中電灯で照らして撮った写真です。一見するとベンチが月明かりで光っているような印象になるように狙って照らしました ^^
※当たり前ですが周りに他の撮影者がいないときじゃないとダメですよ (笑)
<④RAW現像の例>
こんな構図の場合、ハーフNDは使えませんから後からRAW現像で松の木の明るさを適時調整して不自然じゃない程度に調整しました。
<⑤シルエットの例>
地上景がシルエットとしても魅力的ならいっそ黒潰れさせてシルエットにするのもGOODだと思います。下の写真はブルーアワーに沈む満月と棚田のある風景を一緒に撮影したものです ^^
このように、夜空と地上景の明暗差が大きいと夜空と地上景両方のディテールを写真に残すことが難しくなるのですが、いくつか解決策がありますので、是非引き出しとして持っておいてくださいませ ^^b
(5) 構図のコツ
構図なんて自由で良いと思うのですが、今回のテーマが「月景写真を格好良く撮るために」ですから自分なりに気を付けていることを1つ御紹介。
それは、「月景写真である必然性があるように」です。逆に言えば単なる夜景写真に申し訳程度に月が写っているだけでは月景写真としてのインパクトに欠けてしまうということです。失敗例を挙げてみます。
月はちょっとしたアクセントにはなっていますが、正直月が写っていなくても成立してしまう写真だと感じませんか?
(`・ω・´) < 建物写真なのか月景写真なのか
一方、この写真はどうでしょうか?
そんな大それた写真ではないですが、左上の空間に月を配置し、ぱっと見で「月景写真だ」と分かります。逆に月が無いと、この構図の必然性が無いと思います。
なので、構図に迷ったら、「いかに月の存在感がアピールできる構図にするか」または「月がここになければ構図としてバランス悪いだろう」という風にするのはどうでしょうかとアドバイスしてみます。
(6) RAW現像のコツ
~RAW現像の勧め~
月景写真を撮影しているときは、夜間なので瞳孔が開いており完璧に思い描いた露出をその場で出すのは結構難しいです。「家に帰ったら思ったより暗い写真だった!」なんてのはあるあるですよね (笑)
また、先ほどお話ししましたように地上景をより明るく調整したい時にはRAW dataがあると非常に有利です。なので、個人的にはJPEGだけでなくRAWでも記録しておくことをお勧めします。
~RAW現像のコツ~
そしてRAW現像をするときのコツはたった1つ。それは、「夜だと分かるようにする」です。例を挙げてみたいと思います。
この写真、本気で明るくしようと思えばこうできます。
でも明るすぎて「月夜」という印象が弱くないですか?まるで昼間のようです。
そのため、自分的には以下のような点を意識して現像しています。
・アンダー気味に現像する
・敢えて彩度を落とす
・ 周辺減光 (ヴィネット) を強める
といった工夫を個人的にはしています。
例えばさっきの写真の場合、こんな感じに現像しました。
(7) 月景写真のバリエーション
ここまでで自分の考える月景写真撮影のコツについてはほとんど書いてしまいましたが、最後にいくつか特徴的なものを紹介。ひとえに月景写真と言っても多くのバリエーションがあります。
① 月を大きく写した写真
月が上がってくる瞬間や沈む瞬間は、朝焼け夕焼けのように赤色に染まって非常に美しいです。超望遠レンズの扱いに慣れているのでしたら是非挑戦して見て下さい ^^
② 近接撮影のお供にしてみる
③ 星も一緒に写してみる
星も一緒に撮影することも空気の澄んだ夜なら可能かもしれません。この時はオリオン座も構図に入れて写してみました ^^
④ 夕焼けと一緒に
もはやこれは月景写真とは言えませんが、薄暮の時間や夜明け前後も印象的な月が見れたら是非撮影してみたいですよね!特に三日月はこの時間帯に地上に近い位置にあることが多いので、三日月の夜にはお勧めです (`・ω・´)b
(8) おわりに
今回は月景写真を撮るときのコツについて自分なりにまとめてみました。
あまりにも長くなるので触れられなかったところ、例えば朧月を撮影するときにはもっと月の輪郭が残るようにする方が良いとか、もありますが、この記事が月夜を撮影に挑戦したい方の参考になってくれたらうれしく思います。
最後になりますが、私も月景撮影のプロではないですから、何かお気づきの点や他にもこういうことに気を付けると良いということがあれば是非教えてください ^^
それでは今日はここで失礼いたします m(_ _)m
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おまけ①:手持ち撮影は?
旅行先とかだと三脚ないこともありますよね。そういうときは、どこかにカメラを置いてセルフタイマーでシャッターを作動させることもできますが、構図が極めて制限されてしまいます。
なので結局は手持ちで撮影するためにSSを速めて手振れしないように対応するしかないと思います。手振れ補正を活用し、手振れが目立ちにくい広角~超広角レンズを選択すると良いと思います。
おまけ②:月夜に星は撮れるのか?
これは案外と撮れます。むしろ月明かりのおかげで地上景が照らされて星景写真を撮る上ではプラスに働くこともあるように思います💡
ただし、さすがに月あかりの中では星は十分に輝けませんので、北の空を狙うように意識した方が良いと思っています。例えば富士山なんかは静岡側から撮影するとちょうど北向きになるので、下の写真は敢えて月夜を狙って撮影に行きました♪
〜関連リンク〜
この写真を撮影したのはどこ??
ここです!
2020年10月、ハーフNDフィルターで明暗差を埋めてスカイツリーと満月をコラボさせてみました💡
2021年9月のショットです。