~前置き~
こんにちは、Circulation - Cameraです。今回はRAW現像に関する記事を書いてみました。デジカメの広く普及したこの時代、「RAW現像」という言葉は多くの方が耳にしたことがあると思います。しかし、何となく敷居が高くて手が出せないでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
でも、それはちょっともったいない話!RAW現像を知っているだけで、御自身の写真の仕上がりが向上する可能性があるからであります。
例えばこちらの写真をご覧ください。
浜辺で朝日を撮影した写真ですが、露出アンダーです。また、ハーフNDフィルターの効果で右半分だけやたら暗くなってしまっています。でも実は右の岩に打ち付ける波の感じはイメージ通りだったので、できればサルベージしたい。こんなとき、RAW現像は強い味方になります。
このように、露出の程度やムラを調整することができました!
この例ほど極端ではなくても、写真を撮っていると自分のイメージとちょっと違う結果になってしまうことがしばしばありますよね。でもそんな写真だってRAW現像することで自分のイメージに近づけることができます。
言い方を変えれば、 後である程度調整が可能であることが担保されていれば、現場でより構図やピントやシャッターチャンスに集中できるだろうというのが私の主張です。なのでRAW現像に二の足を踏んでいる方には是非ともお勧めしたい方法論なのです。
世の中、RAW現像を勧めるページはごまんとあるので、わざわざ私が記事にまとめる必要もないかもしれませんが、せっかく写真ブログやっていますし、自分なりに解説してみたいと思います。逆に言えば、日常的にRAW現像されている方には、当たり前すぎる記事なので読み飛ばしてやって下さいね ^^;
それでは、ちょっと長い記事ですが、よろしくお願いします m(_ _)m
~RAWデータとは?~
RAWデータというのはデジカメの撮像素子で記録した光データそのものを指します。そもそもRAW (ロー) というのは「生」という意味です。例えばraw fishは生魚って意味なので、raw dataは生のデータということです。
このRAWデータをカメラの中のアルゴリズムに従って調整して写真として見れる状態にしたものが、撮って出しのJPEGデータです。で、RAW現像というのはカメラのアルゴリズム任せにしないで、RAWデータを自分自身で半分マニュアルで調整する作業です。図示しますが、簡単な違いですよね。
~RAWデータはどうやって記録する?~
カメラによって違いますが、撮影結果をJPEGで残すかRAWで残すかJPEG+RAWで残すかを選択できます。例えばNIKON D810の場合は、肩にある"QUAL"を操作することで、その選択ができます。
ちなみに、RAWデータを残しておくことにほとんどの場合デメリットはありません。強いて言うなら2点ほど。1つは、RAWデータは重いので大容量のメディアが必要であるという点です。2つ目は、機種によって程度の差は大きいのですが、連射性が低下するという点です (RAWデータは重いのでカメラ内のバッファがすぐに埋まってしまうから)。
~現像では実際にどんなことができるの?~
さて、話をRAW現像に戻しましょう。JPEGのデータをいじくるのとRAW現像ではできること自体はそんなに変わりません。例を挙げるなら、
- 明るさの調整
- 色合いの調整
- シャープさの調整
- コントラストの調整
- ノイズの調整
などが可能です。こんなことはスマホのレタッチアプリでもできますよね?
しかし、JPEGデータを調整するのとRAW現像をするのとでは、「調整できる幅が違う」 と考えて下さい。JPEGデータをいじくるのは一度調整されたデータの加工でしかありません。
それに対してRAWデータはRBCの3色に分けた撮像素子が受けた光データそのものであり、間引きされていないデータですから残っている情報量が違います。
これに関してはbit数の違いなどの理屈を長々と書くよりも、実際に見てもらった方が早いと思うので5つほど実例提示したいと思います。
【例1:暗所のデータ】
RAW現像の恩恵を非常に大きく受けることができるのが露出の調整です。撮った写真を後で確認して、ちょっと暗いなぁって思うことはしょっちゅうあると思います。そんなとき、JPEGデータで明るさを調整するのとRAW現像で明るさを調整するのでは雲泥の差があります。例えばこの露出アンダーな写真をご覧ください。
この写真のJPEGデータを精一杯明るくしても下の状態が限界です。
一方でRAWデータで立ち上げた場合をご覧下さい。
単純にシャドウ部を明るくしただけですが、JPEGになったデータを調整したときと全然違いますよね!RAWデータには川の色や奥のビルや木々や橋のデータが残っているので、こんなにも後から立ち上げることが可能となるのです。
【例2:明るい場所のデータ】
もちろん、明る過ぎた場所のデータも (白飛びさえしていなければ) 取り戻すことができます。急いで撮影したためやや露出オーバー気味になってしまったこの写真も…
RAW現像によって頬の部分の毛のディテールまできちんとサルベージできているように思います ^^
ただ、これらの明るさの調整は完全に黒潰れまたは白飛びしている場所には適用できません。ヒストグラムで白飛びや黒潰れが無いか確認するなど、現場で確認しておく必要があります。
【例3:ホワイトバランスなどの調整】
RAW現像をするならば画質劣化することなくホワイトバランスを調整することができます。また、ピクチャーコントロール (ピクチャースタイル) を調整することも可能です。こちらも写真を例として持ってきました。
明け方に湖畔で撮影していたのですが、ホワイトバランスを調整しておらず、青みのかかった写真になってしまいました。
しかし、RAW現像でしたら後から画質劣化の心配なく、本来の色味を取り戻すことができます。これ以外にも、彩度やコントラストも後から調整可能です。
【例4:星のデータ】
暗所のデータと同じことですが、星撮影においてRAW現像は素晴らしい威力を発揮します。例えばこの写真はソフトフィルターをかけて星景を撮影した写真です。現場ではバッチリだと思ったのですが、帰宅すると露出アンダー。こんなことは稀ではありませんよね?
JPEGで単純に明るさを調整して見ましょう。白樺は乾いたカサカサした感じですし、空もノイジーで、なんだか埃っぽいくすんだ感じです。
一方、RAW現像をすれば暗所のデータはしっかり残っているので似たような調整をしても結果は段違いです!
【例5:明暗差の激しい場面】
RAW現像例の最後になりますが、写真は明暗差の激しい場面を苦手とします。例えばこのようなシーン。
空に露出を合わせれば建物が露出アンダーに、建物に露出を合わせれば空が露出オーバーになってしまいます。こんなことはしょっちゅうありますよね。もちろん、建物はシルエットにした構図を考えることなど工夫はできますが、両方とも写したい時は建物が黒潰れしない程度に写しておいて、後でRAW現像すればある程度イメージ (というか肉眼で見た光景) に近づけることができます。
ちなみにJPEGでシャドウ部を立ち上げようとしても下のような写真がほぼ限界でした。RAW現像で調整できる幅が大きいという事、ご納得下さいましたでしょうか?
~RAW現像でできること~
このように明るさの調整、カラーの調整、ホワイトバランスの調整、コントラストの調整、彩度の調整などをかなり広い範囲で可能になります。
他にもピクセル間の補正度合い、すなわち写真の輪郭をどこまで強調するか (シャープネスの調整)、ノイズをどれだけ減らすか・付加するかを決めることもできます。また、レンズのデータが入っていれば補正で周辺減光やレンズの歪み補正を自動でしてくれたりもします。
~RAW現像でできないこと~
逆にRAW現像で調整できないことは現場できちんと追及する必要があります。RAW現像は魔法ではありません。あくまで撮像素子に記録させた光のデータを自分の手で取捨択一・調整するだけです。なので、下のような制限があります。
- 白飛びや黒潰れはサルベージできない
- 手振れや被写体ブレはどうしようもない
- ピント位置の調整はできない
- 被写界深度も基本的に変更できない
- ボケの質は変わらない (丸ボケの形や二線ボケ)
- 写っていないものは映らない
当たり前のことですが、現場ではこういう点に神経を使うべきです。
~現場で「写真を完成」させなくていい~
これが本日のtake home messageです。言葉のニュアンスだけ聞くと誤解されてしまいそうですが、ここまで読んで下さった方でしたら意味を正しく理解してもらえると思います。
作品として写真を残したい場合は、現場で気にしなくてはいけないことはたくさんあります。構図、使用するレンズ、絞り値、シャッタースピード、ISO感度、ピント位置。枚挙にいとまがありません。
そんな中で、RAW現像ができるのでしたら、細かい明るさや色調など後で調整できることは後回しにできます。
また、RAWデータを残しておけば、現場で多少露出や色調を失敗してしまったけれど素晴らしい一瞬をとらえた写真を綺麗にサルベージすることもできます。
「現場で写真を完成させなくていい」。
これが今回一番言いたいことでした ^^
どうですか!?
RAW現像に興味を持って頂けましたでしょうか!?
~有名なRAW現像ソフト~
この記事で言いたいことはもう言えたのですが、最後に実際はどんなパソコンのアプリやソフトを使用するのかについても簡単に触れておきます。
個人的に一番手っ取り早いのはメーカーの純正ソフトを使用することだと思います。カメラを買うとインストールディスクが付属しているパターンと会社のHPからダウンロードするパターンがあります。例えばNIKONのカメラならNIKONのホームページから現像ソフトである「CAPTURE NX-D」をダウンロードすれば無料でRAW現像ができますし、CANONのカメラならCANONのホームページからDPP (Digital Photo Professional) をダウンロードすれば良いわけです。
純正ソフトでなくて有名なのはAdobe社のLight Roomではないでしょうか?
※引用:Adobe Lightroomを購入 | 写真編集管理ソフトウェア
フォトショップとセットで月々980~1980円 (税別) で使用することができます。自分は純正ソフトもLight Roomどちらも使ったことありますが、基本的なことをするだけでしたら純正ソフトで大丈夫ですよ。お金かかりませんしね (笑)
~具体的な方法~
ここまで話を広げると死ぬほど長くなってしまいますので割愛させていただきますが、RAWデータを現像ソフトで開いて右側や上側にあるパラメータやツールを使って自分のイメージに近づけていき、最後にJPEGデータ (やTIFFデータ) を保存します。
ちなみに、その後フォトショップなどで調整することをしばしばRAW現像に対してレタッチと表現します。
~おわりに~
RAW現像は魔法ではありません。できることとできないことがありますし、現場で極力いい写真を撮る努力をすることが大切なことは言うまでもありません。しかし、後からある程度写真の明るさやノイズなどは調整できるということを知っていれば、現場でやるべきことにより専念できるようになるかもしれません。
実はカメラを初めて結構長い間、JPEG撮って出しだけで過ごしていたので、もったいないことをしたと思ったことを思い出し、この記事をRAW現像初心者のあなた向けに書いてみました。自分も今後もっとRAW現像に明るくなっていけるよう精進していきたいです。
以上ですが、何かご質問などございましたらコメント欄にお願いします。それではまた次回、お会いしましょう m(_ _)m
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~おまけ①:JPEG撮って出しはダメなのか?~
私はJPEG撮って出ししかしないことがダメだとは全く思いません。「RAW現像で後から調整できるのは分かったけど、そんな面倒くさいことやってられん」という意見も至極まっとうだと思います。
実際、自分もRAW + JPEGで撮影していて、編集の必要がない写真はJPEG撮って出しデータをそのまま採用することがままあります。例えばこの写真はJPEG撮って出しでほとんどイメージ通り撮れましたので、後からJPEGデータの明るさなどを微調整した程度で完成としています。
ただ、仕上がりに不満がある場合や、もっと追い込みたい写真は常に一定数あるので、そんなときにRAWデータも残っていると非常に助かるわけです。
敢えてJPEG撮って出しだけで運用しているのと、RAW現像の敷居が高くて手を出せないでいるのとでは意味が全く違いますので、この記事が後者のような方がRAW現像にチャレンジするきっかけになってくれたらうれしいです ^^
~おまけ②:ISO invariance~
ISO不変性 (= ISO invariance) という言葉をご存知でしょうか?RAW現像で後から明るさを調整するのとISO感度をきちんと上げて撮影するのとではどちらの方が良い結果になるのかというテーマなのですが、以前ちょっとがんばってまとめたことがある話なので気になる方は是非!
~関連リンク~
厳しい逆光条件でしたが、RAWデータを残して後で調整することで記念日の写真もばっちりゲットすることができました♪
最近行った北海道旅行でも現場での露出調整が難しい場面で重宝しました ^^b