突然ですが、カメラクイズです。
(問) デジタル一眼レフ機のピントに関する以下の記述について、正しければO、間違っていれば×と答えて下さい。
(1) 一眼レフでは、ファインダーをのぞいて、オートフォーカスでピントを合わせ、撮影する直前までピントが合っているようだったが、出来上がった写真はピントが外れていることがある。
(2) 一眼レフでは、ファインダーをのぞいて、マニュアルフォーカス、撮影する直前にピントを合わせたが、出来上がった写真はピントが外れていることがある。
正解は、、、
どちらも〇です💡
まぁ、試験問題って「~ということがある」って書かれている選択肢は大体正解という法則がありますが (笑)
さてさて。
しかしこれは由々しき事態です!
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
オートフォーカスでピントを合わせたのに撮影した瞬間ピントがずれる!?
せっかくマニュアルでピントを合わせたのに撮影した瞬間ピントがずれる!?
どちらもシャレにならない現象です💦
この事象が発生する原因はいくつか考えられますが、そんな原因の1つに「フォーカスシフト」という概念があります。
今回はこの「フォーカスシフト」について、解説してみたいと思います。
なるべく分かりやすくまとめたつもりですが、長文ですし、ちょっと小難しい話なので、興味のある方は時間のある時に読んでやって下さいませ m(_ _)m
~フォーカスシフトとは?~
フォーカスシフトは日本語では焦点移動と言います。
そのまんまですね ^^;
これはF値を変更するとピント位置がずれることを指します。
実はこの現象はほとんどのレンズで発生しています。
~今日の問題の解説~
まず、案外知られていないことを1つ御紹介します。
昨今の一眼レフは、設定したF値に関わらず、ファインダーをのぞいて見える画像は、F値開放の状態です。
※「知っとるわ!」って人にはごめんなさい ^^;
実はシャッターボタンが押される直前までF値は開放で、シャッターボタンを押した瞬間に、初めて絞りが設定したF値まで絞られるのです。
具体例を出してみます💡
これには理由があります。
F値が絞られた状態ですとファインダーが暗くなってしまい、良く見えないのです。
そのため、大半の一眼レフではファインダーをのぞくと絞り開放の映像が見え、撮影時だけ絞られるように工夫されています。
…あれ??
勘の良い人は気づきましたか?
さっきF値が変化するとピント位置が変わると言いましたよね?
そう!
ですからシャッターを切る直前までピントが合っていてもF値が変化した瞬間、ピント位置が変化するのです!!
ですから、最初の2つの問題文の、
(1) 一眼レフでは、ファインダーをのぞいて、オートフォーカスでピントを合わせ、撮影する直前までピントが合っているようだったが、出来上がった写真はピントが外れることがある。
(2) 一眼レフでは、ファインダーをのぞいて、マニュアルフォーカス、撮影する直前にピントを合わせたが、出来上がった写真はピントが外れることがある。
はいずれも正しいのです!
もう少しこの話を掘り下げてみましょう💡
~ライブビューでは?~
ここまでは一眼レフのファインダーをのぞいた場合の説明でした。
では、ライブビュー機能を使用してピント合わせをする場合はどうでしょうか?
これは機種によります!
機種によって先ほどのように開放F値の画像が反映されるものもありますし、設定したF値で見ることができるものもあります。また、その切り替えが可能な機種もあります。
フォーカスシフトを考慮すると、設定したF値で見れることは有利ですよね?
また、事前にボケの具合を確認できる点も有利です。
※例えばD850などのNIKONの一眼レフは設定したF値でライブビュー観察することができます。
ただ、これも実は一長一短でして、絞るとどこがピントピークか分かりにくくなりますし、ライブビュー時のノイズも大きくなるためマニュアルフォーカシングが案外苦戦します。また、ただでさえ遅いライブビュー時のオートフォーカスはさらに遅くなります。
以下にまとめてみました💡
~ミラーレス一眼の場合は?~
ミラーレス機の場合はライブビューと同じと思っていて下さい。
全てのメーカーの機種を触ったわけではありませんが、中級~上級機種の場合、開放での観察か設定した絞りの観察かを選べる場合が多いようです。
これもまとめてみました♪
~オートフォーカス~
良く聞かれる、「設定した絞りで観察しつつ、オートフォーカスすればフォーカスシフトしないのか?」という質問に答えます。
例えば、ライブビューやミラーレス機に於いて、F8に設定して、F8の絞り値で構図を決めて、オートフォーカスする場合などですね。
実は影響を受けてしまうのです💦
これも意外と知られていないかもしれませんが、オートフォーカスをする場合、いったん絞りは開放になります。
ライブビューやミラーレス機の場合、たとえ設定したF値で観察していても、オートフォーカスを作動すると、基本的にいったん開放に変化して、フォーカシングが完了したらまた設定されたF値に変化しますのでフォーカスシフトの影響は受ける可能性があります。
※ミラーレス機種を使用されている方は、オートフォーカスの瞬間に画面が明るくなる経験をしたことがあるかもしれません。これはオートフォーカスの瞬間、絞りが開放されて明るくなるからです。
~ここまでのまとめ~
・F値が変化すると、それに伴いピント位置が変化します。
・これをフォーカスシフトと言います。
・一眼レフのファインダーは、基本的に絞り開放の映像です。
・従って、ファインダーでピント合わせをするとフォーカスシフトの影響を受けることがあります。
・ライブビューやミラーレスの場合、絞り開放の映像で観察するか、設定したF値で観察するかは機種によって異なります。
・設定したF値で観察する場合もオートフォーカス時は絞りが動くので、フォーカスシフトの影響は受けることがあります。
~フォーカスシフト回避~
ここまでの内容を総合すると、デジカメにおいてフォーカスシフトの影響を最大限回避するためには、
・設定絞りで観察する
・かつ、マニュアルでピント合わせする
というのが一番の方法と考えます。
また、F値開放で撮影する場合は、光学ファインダーでピント合わせしてもフォーカスシフトしませんよね、原理的には ^^;
~実際の撮影への影響は!?~
さて、こう聞くと困ったものですね。
フォーカスシフト。。。
しかし、実際の撮影でそれほど困ることはないかもしれません。
それは何故かというと、F値は絞るほど被写界深度が深くなるからです。
被写界深度はピントが合っていると見なせる範囲です。
多くの場合、ピント面が移動しても、被写界深度が深くなる分、ピントを合わせたい場所は広くなった被写界深度に飲み込んでもらえるのです。
図示しますね💡
ただ、一部のレンズにはフォーカスシフトがかなり大きく、本当にピントを合わせたい場所が、被写界深度から外れてしまうものもあり、問題になることがあります。名前は伏せますが、時折デジカメinfoなどでも取り上げられる事象です。
~なぜこんなことが起こる?~
最後に、フォーカスシフトが発生する原因を説明します。
一言でいえば、球面収差の影響です。
まず、理想的なレンズについて図示します。
※WIKIPEDIAより引用
この図にあるように、理想的な凸レンズは、レンズに垂直に侵入した光は後方焦点 (F') を通過します。
しかし、現実に使用するレンズは、当然ですが、完璧な凸レンズではないのでこのようにばらけて焦点を結びます。これを球面収差と言います。
絞ると使用される光束が変化します。
すると、ピント位置が移動してしまうのです。
※ちなみに球面収差を補正しすぎるとボケが固くなると言います。良く言うのは二線ボケが目立つようになると言いますね。
~まとめ~
・F値が変化した際に、ピント位置が変化することをフォーカスシフトと言います。
・一眼レフの光学ファインダーは、基本的に絞り開放の像です。
・従って、ファインダーでピント合わせをするとフォーカスシフトの影響を受けることがあります。
・ライブビューやミラーレス機の場合、絞り開放の映像が出てくるか、設定したF値の画像が出てくるかは機種によって異なります。
・フォーカスシフトを回避するには、絶対的な方法ではありませんが、ライブビューかミラーレス機で設定F値が反映されるようにして、マニュアルでピント合わせするのが最も有効と考えます。
・ただ、フォーカスシフトは多くの場合、被写界深度に相殺され無視でき、そこまで神経質にならなくてもいいかもしれません。
・ちなみにフォーカスシフトの原因は球面収差です。
~おわりに~
今回はフォーカスシフトという概念について解説してみました。
文字ばかりの記事になってしまい、すいませんでした ^^;
まぁ、実際の撮影に於いては、よほどフォーカスシフトが目立つレンズでなければ気にしなくても大丈夫です。
ただ、フォーカスシフトについて、自分で調べようと思うと案外難しい内容ですから、ここで包括的にまとめてみました。(`・ω・´)b
最後になりますが、もし、私が勘違いしている点や御質問がございましたらコメント欄にお願いいたします。
それではまたよろしくお願いします m(_ _)m