Circulation - Camera

Since 2017-05-01

カメラの考察 ~写真のボケが綺麗か汚いか?どこを見ればいいの?~

こんにちは、Circulation - Cameraです。

今回は「写真のボケ」について考察してみたいと思います。ボケは写真を構成する魅力的なファクターです。ボケ表現を楽しみたくて一眼を始めたっていう人もいらっしゃいますし、最近のスマホでもボケを人工的に作れるようになってきたり、みんな大好きな表現だと思います♪

実際、ピント面が浮かび上がるような写真は主題を引き立ててくれますし、写真に立体感を与えてくれます。また、背景の情報を整理・制御してくれる引き算の一種でもあり、写真表現の強い味方であります ^^

DSC_8668oのコピー

さて、このボケの良し悪しなのですが、しばしば直感的に扱われます。最近出たレンズのレビューでも、レンズのボケに関しては結構曖昧な評価にとどまることが多いように思います。

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実際のデジカメインフォのレンズレビューから抜粋。


まぁ、実際のところボケの良し悪しなんて好みの問題だと思いますし、写真を撮るときにはもっと拘ることはたくさんあると思います ^^;

ただ、写真を評価するとき「どういうボケ味が一般的に良いまたは悪いとされるのか」整理する機会ってあまりないと考え、今回記事にまとめてみました。

ちょっと長い記事なので、興味のある方は時間のある時に見て下さいますと幸いです。それではよろしくお願いします m(_ _)m

 

 

~ボケの量と質~

まず、写真のボケについて考えるときは、

・「どれだけ大きくぼけているか ≒ ボケの量」

・「どれだけ綺麗にぼけているか ≒ ボケの質」

に分けて評価すると良いと思います。それぞれ解説しますが、ボケの量よりもボケの質の方が今日のメインテーマですし、しばしば話題に上がります。

 

 

~ボケの量~

ボケの量はどれだけアウトフォーカス部分が滲んでいるかということです。ボケ円形という言葉もほぼ同義語です。ボケの量は以下の4つのパラメータで操作できます。

(1) 絞りを開くほど大きくなる

(2) 焦点距離の長いレンズの方が大きくなる

(3) 被写体との距離が近いほど大きくなる

((4) 許容錯乱円が小さいほど大きくなる)

ただし、4つ目の「許容錯乱円」は使うカメラのセンサーサイズ (またはフィルム) によって決まりますので、現実的にはあまり撮影時にどうこうするものではなく、(1) ~

 (3) が、現実的な変数になってきます。

実際に試してみます。それぞれ別のレンズ別のF値で撮影してみました。

<25mm, F5.6>

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<100mm, F 2.0>

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明らかに後者の方 (すなわち、より長い焦点距離と小さいF値で撮影した方) がボケの量が大きいですよね。このように、絞りの大きさ・レンズの焦点距離・被写体との距離によってボケ量は容易に操作することができます。もっとも、これらのパラメータでボケ量が増減することは、一眼の初心者以上の方にとっては直感的なことで、自然とやっていることと思います。

 

 

~ボケの質とは?~

さて、ここからが今日の本題です。ボケの質はレンズの性質に大きく依存します。同じ焦点距離・同じ撮影距離・同じF値・同じボディを使用しても、レンズによってその結果は大きく異なります。そんな「ボケの質」の評価は難しく、しばしば直感的に扱われます

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そして、始めに明言しますが、私はそれでもいいと思っています。最終的には自分が納得するボケならそれで良い ( ̄▽ ̄)

しかし、もし誰かとボケの良し悪しを論ずるとき、よく論点になる評価ポイントがいくつかあるのも事実です。で、以下のようなポイントが代表的ではないでしょうか?

(1) 二線ボケの有無

(2) ぼかした物体の輪郭

(3) 丸ボケの形状

(4) ボケとピント面の境界

(5) 四隅の流れ

完璧な分類ではないでしょうが、この記事ではこういったポイントに絞って各項目を解説して行きたいと思います ^^

 

 

 ~ボケの評価 (1) 二線ボケ~

二線ボケは芳しくないとされるボケ味の代表選手ではないでしょうか?

読んで字のごとく、線がボケるときに二重に見えてしまう感じのボケですね。

例えばこの写真をご覧ください。

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ボケている部分の、木の枝が二重に分裂しています。言い換えれば枝の中心よりも枝の周囲の方が濃くなっています。

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一般的には、二重に見えないで、ふんわりとした厚みのあるボケであったほうが好まれます。こういう「二線ボケ」は密集すると「ガサガサした背景」になります。

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~ボケの評価 (2) ぼかした物体の輪郭~

二線ボケと同じ原理なのですが、アウトフォーカスの被写体の輪郭のエッジが立っているよりはなだらかな方が良いとされます。

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例えばこの写真は、水たまりに反射した桜の木にピントを合わせています。地面には無数の桜の花びらが落ちていて、芝生もガサガサしていてボケの質が非常に問われる状態でしたが、比較的ふんわりとしたエッジの効いていないボケに仕上がってくれたように感じます。

 

~ボケの評価 (3) 丸ボケの形状~

① きちんとした円形になるのか楕円形 (レモン型) になるのか。

例えば下の2枚の写真を比べてみて下さい。前者は点光源がレモン型にボケて、後者は正円形にボケていることがわかります。一般的に「丸ボケはフチがシャープな正円形で内部の明るさが一様なボケ円」が好まれますね。

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DSC_0004

レモン型になってしまうのは口径食の影響です。下の記事の中でも書いたのですが、口径食は大口径レンズや鏡胴の長いレンズでは発生しやすい現象です。

なお、口径食は絞ることである程度改善します。開放F値では楕円形になるレンズも少し絞ると円形に近くなってくれたりしますよ。

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同じレンズですが、左はF1.4で、右はF2.8で撮影したのでボケの形が違います。

この2枚の写真を見ると、「ボケの大きさ」はF1.4の方が大きいですが、「ボケの質である点光源の形状」はF2.8の方が整っています。

 

② 輪郭はなだらかか角ばっているか

このように、F値によって同じレンズでも点光源のボケ方は変化します。開放付近では円形にボケるレンズでも絞り込むと多角形に変化していきます。例えば開放F1.4のレンズでF5.6で撮影したこの写真は、点光源が結構カクカクしていますよね。

DSC_2978

 

③ 年輪ボケはないか

点光源の中に指紋のような独特な模様があらわれることがあります。玉ねぎボケなどとも言われますね。これはカリっとした描写を求めた非球面レンズを多用したレンズで比較的多く認めます。また、前玉が汚れていると点光源の中に泡のような模様があらわれてしまいます。

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年輪ボケの例です。



 

~ボケの評価 (4) アウトフォーカスへの滑らかな移行~

正直そこまで気にしたことは無いのですが、アウトフォーカスへの移行はなるべくなだらかなことに越したことはありません。これがなだらかなほど、立体感を感じさせてくれます。

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ついでにこのボケはそれほどエッジが立っていなくてふわりとした印象です。

 

 


~ボケの評価 (5) 四隅の流れ~

ある方向に流れたようなボケもよくないボケ味と言われます。

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広角レンズで特に目立ちます。四隅が流れていますよね?

なお、ぐるぐるボケもこれに近いものがあるかもしれません。ただ、ぐるぐるボケは「レンズの味」として良い方向に評価されるケースが多いように思います。

( ̄▽ ̄;) < ボケの良し悪しは最終的には主観に帰結するのです。 

 

 

~ここまでのまとめ~

・ボケに関して考えるときは、量と質の2つの着目点があります。

・ボケの量は、F値焦点距離、主題との距離で変動します。

・ボケの質はレンズの性質に大きく依存します。

・ボケの質の良し悪しは最終的には主観的なものですが、以下のようなポイントで評価されることが多いように思います。

 (1) 二線ボケの有無

 (2) ぼかした物体の輪郭

 (3) 丸ボケの形状

 (4) ボケとピント面の境界

 (5) 四隅の流れ

 

 

~高級単焦点レンズの方が良い?~

一般的にズームレンズより単焦点レンズの方がボケの質は良いとされています。話が長くなってしまいますし、レンズの個体差がありますので検証はしませんが、経験的にもそれはそうかと思います。

ただ、高価なレンズほどボケが綺麗というのは間違いです。安価な単焦点レンズでも十分美しいボケを表現できるものがあります。その一方で、例えばCarl ZeissのOtusは解像感は非常に良く、お値段も非常に高いですが、二線ボケを指摘されています。

 

 

~アウトフォーカスの構図も大事!~

ここまで「ボケの質」の評価点について解説してみました。さて、ボケの質とはちょっと異なるかもしれませんが関連した話題を一つ挟みます。

アウトフォーカス部分の構図も、個人的には広義な「ボケの質」だと思っています。背景を溶かしてただの色にする場合は気になりませんが、ボケの中でも主張できることはたくさんあります。

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例えばこの写真でピントを合わせたのは中央のアジサイです。では背景はボカすので構図はどうでもいいかというとそうではありません。アウトフォーカス部分に傘をもった歩行者をバランスを考えて入れることでストーリー性や場面の説明をしてくれます。

 

また、この写真は、口径食は出ていますが、ボケの中にオリオン座が浮かび上がっていて、写真を構成する重要な要素となってくれています。

DSC_1593のコピー

このように、ぼかした空間の構図も含めて「広い意味でのボケの質」として良いと思います。

 

 

 

~まとめです!~

・ボケに関して考えるときは、量と質の2つの着目点があります。

・ボケの量は、F値焦点距離、主題との距離で変動します。

・ボケの質はレンズの性質に大きく依存します。

・ボケの質の良し悪しは最終的には主観的なものですが、以下のようなポイントで評価されることが多いように思います。

 (1) 二線ボケの有無

 (2) ぼかした物体の輪郭

 (3) 丸ボケの形状

 (4) ボケとピント面の境界

 (5) 四隅の流れ

・一般的にズームレンズより単焦点レンズの方がボケの質は良いとされますが、高価なレンズだからボケが綺麗とは限りません。

・撮影に慣れてきたら、アウトフォーカス部分の構図にも注意するとおもしろいかもしれません。

 

 

~おわりに~

今回はボケに対してクローズアップしていろいろと語ってみました ( ̄▽ ̄)

ただ、本文中でも何回も同じことを言っていますが、最終的にボケの質は好みの世界ですし、そこにばかり拘ると写真の楽しさが減ってしまいます

私だってもちろんボケがきれいな写真が撮れると嬉しいですが、多少ボケの形が汚いからダメ写真だなんて思いません。例えばこの写真、口径食は大きいですが、構図も雰囲気も気に入っています。

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また、実を言うと個人的には二線ボケが多少出てしまってざらつき気味の背景もそんなに気になりません ^^;

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そう、あくまで最終的には好み!

そして写真撮影では他にもこだわるべきところがたくさんありますから、ボケに拘るならまだしも囚われていては楽しく撮影できなくなってしまいます ( ̄▽ ̄:)

でも一般論として「こういうところに着目すると、ボケが評価できる」というのは知っていても損ではないと思いこの記事でまとめてみました。最後になりますが、ご質問などがございましたらコメント欄にいただけると幸いです。

それでは今日はここで失礼いたします m(_ _)m

 

 

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~おまけ①:二線ボケと球面収差~

ここからはおまけ話です。ちょっとマニアックな内容であります ( ̄▽ ̄;)

さて、ボケの質と球面収差には大きな関係があります。球面収差を補正すると二線ボケができやすくなるのですが、その理屈を簡単に説明してみます。 

※ただし、私はレンズ屋さんではないので、あくまで自分の中の理解です。もし、もっと詳しい方で「これは違う」というご意見がございましたらご教授ください。訂正させていただきます m(_ _)m

まず、本来は凸レンズの面軸に向かって直進してきた光は焦点に集まるはずです。

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しかし、実際には球面収差というものがあり、レンズ周辺を通過した光は焦点よりも手前に向かって屈折します。

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この場合、後ボケは光が光軸から外れるほどふわりと広がるので二線ボケしにくい状況です。ただ、これではピント面が不鮮明になってしまうしフォーカスシフトの原因になりますので画質を改善させるために工夫が必要です。

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そこで、レンズ周辺を通る光が焦点付近を通過できるように補正 (コレクション) してみました。すると、後ボケの周辺の光量が増えてしまいます。これが二線ボケの原因になってしまうと考えます。

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このような状況をオーバーコレクションと言います。実際のレンズ設計ではピント面の画質とボケの美しさを両立させるよう更に様々な工夫がなされているわけです。

※二線ボケやボケの輪郭のエッジが立ってしまう現象はこの球面収差で説明できます (エッジの色が滲むのは色収差の影響もあるのでしょうが)。一方で、「四隅が流れるようなボケ」は球面収差よりも非点収差やコマ収差が効いていると考えます。

 

 

~おまけ②:STFレンズ~

ボケの非常に綺麗にするために少し変わったアプローチをしたSTF(スムース・トランス・フォーカス)レンズというものがあります。ソニーレンズ 135mm F2.8 [T4.5] STFが有名でしょうか。

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このレンズはアポダイゼーション光学エレメントというレンズの周辺にいくほど透過する光量が少なくなる特殊フィルター (NDフィルターの一種とも言えるかと思います) を搭載することで、前後のボケ共に、エッジの立たない一方で芯のある、画像の輪郭が柔らかに崩れたようなボケが実現できるとされています。

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